失敬だなキミ
俺はいつでもエロ真面目だ

ソウルイーター第71話を読んでからお楽しみ下さい

 「うわースゲーな」
 「おい気軽に乙女の胸を触るな!」
 薄暗い闇を帽子の陰に潜ませながら、男性化したパティが女性化したブラックスターの胸をぽよぽよといじくる。
 「元々のわたしよかちっこいケドどーどーとしたモンだ」
 手のひらで持ち上げるように“彼”は“彼女”の背後に回り、ずっしりと温かい胸の確かさを堪能していた。まるでお気に入りのおもちゃのように。
 「やっぱコレって自分の理想とか入ってんのかなぁ?」
 少し向こうであまり変わらない容姿のマカ(結構カッコイイ)が自分の体をまじまじと観察しながら白い髪を揺らすパートナーに言う。
 「あんたちょー美少女じゃん、なにそのロングヘアー」
 へらへら笑う“パティ君”が嫌そうな顔の“ソウルちゃん”をからかうと、“彼女”は憤慨を何とか収めながらうるせぇよとそっぽを向くが、そのいちいちの仕草があまりにも可憐でパティは妙な気分になる。長い髪はあくまでも柔らかく薫り、触れれば折れてしまいそうな細い指は氷砂糖のように透明感があったから。
 「そのままでいれば絶対嫁に貰ってやるのに」
 何の気なしでいて単なる本心であるそんなことを言うと、いまだパティの胸の中に居るブラックスターがパティの帽子を引っつかんで喚いた。
 「俺様の体触りながら他の女に目移りするたぁいい度胸だなァ!?」
 いつものように眉を吊り上げ顔を歪めたのだろう、本人にすれば。だがそれも女の顔でしかも可愛らしい部類に女性化している今のブラックスターでは迫力も何もあったものではない。ギロリといつもなら表現せざるを得ないような仕草は、ぷんぷん!とでも背後に書き文字が現れそうだ。
 「……なんだよ、早くも嫁気取りかァ?」
 唇の端を歪めるいつものパティがする脅し顔。だが今彼女は“彼”なのである。大きな青い瞳に金色の髪、幼い顔立ちという愛らしい造詣を取り払ってしまえば、その禍々しさはまるで地獄の底の様。大きな目はギョロギョロ動き、帽子の影から時々猛禽類の眼光を思わせる雰囲気を放っている。
 「ひぃ……パティお前……マジ顔こえぇ……!」
 「あぁん? 今更なにビビってンだァ」
 自分如きに弱腰になったブラックスターが面白いのか、パティはその壮絶で寒気のするような威嚇をやめない。いつもの“彼女”ならばキャハハハと笑って済ますようなことを、“彼”はあくまでも強硬的な姿勢で拘り続けた。
 「そのくらいで許してやってよ」
 そこに割って入ったのは言うまでもなく男性化してこの場の誰よりも(もしかすると本来の誰よりも?)精悍で男らしくなった椿その人。後ろで括った髪もわざとらしさは微塵もなく、大きな体格も筋肉の付き方も端正な顔立ちも、全て元々そうであったかのように自然なのだ。
 「うわぁん椿ィー!」
 両手をばたばたと椿の方に伸ばしながら助けを乞うように逃げ出そうとするブラックスターを、パティは更に力を込めて抱きすくめる。こんな面白いおもちゃを逃す手はない、という風に。
 「おー椿めっちゃカッコイーじゃん。妬けるねぇ」
 くけけけ、と不思議な調子で笑ったパティがブラックスターの頬をべろりと舐めながら更に挑発をする。
 「欲しかったら取ってみな」
 一種、異様な空気がその場に流れて誰も彼もがおかしな緊張に包まれる。
 たった一人を除いて。
 「バカなことしてんじゃねぇよパティ!」
 ニット帽ごとゲンコツを食らわされたパティはたまらずしゃがみこんで頭を抑えた。
 「ぎゃーお姉ちゃん!力加減しろよぉ!シャレになんないよこれぇ!!」
 ジタバタ転げまわりながらパティが涙目で猛抗議したが、しこたま目つきの悪い坊主刈りのリズはそんなものどこ吹く風。慣れたものだ。
 「キッドを助けに来たんだろ!真面目にやれ!」
 その一声にようやく金縛りの解けたキリク(眼鏡っ子で結構な清純系美少女)がボソッと一言つぶやいた。
 「……キッドがこの場に居たらどんな感じだったんだろうな……」

 その後、緊急会議が5分超で開催されたことは言うまでもない。
 どっとはらい。



 17:12 2010/03/13 18:25 2010/03/13表現追加。 さく先生が物凄い絵を落書いてくださったのでその返歌として。……あんまり深く考えないで下さい。僕も考えてませんしアッシャー大先生も間違いなく考えてません。だってさく先生がパティオさんと★子さんって物凄く軽く「このままでセクロスしたらどーなんだろう!」とか言いそうDAYONEって言うからその方面で頑張ろうかと思ったんだけどなんか取り返しが付かなくなりそうなので来月号を読んでから書くことにする。(書くのかよ!!)






やさしい よわむし いくじなし

 俺は別に普通のヒトだ。
 脳の具合が幾ばくかユカイだとか、社会に馴染みにくい性質だとか、ブチ切れたら訳が分らなくなるとか、あんまり友好的でも気が長い性格でもないとか、そもそも友達がほとんどいないとか……そういうのも含めて、俺は断じて普通のヒトなのだ。
 故に、まあ……その、なんだ。
 人並に恋だってする。
 誰に言ったこともないけど。
 つーか誰にも云わねーケド。
 ……絶対誰にも言えないけど。
 まぁそんなことはどうだっていい。要は俺がフツーの人だってことを解ってもらえれば後は何でも構わない。
 できれば暴力なんか使いたかねェし(身体が毎度ぶっ壊れるのがいい気分なワケねぇ)叶うなら心安らかに日々暮らしてェし、許してもらえるならニコニコしててェ。
 だけど残念だが俺の人生はそういう風には出来ていない。ミノ蟲野郎に目をつけられ、街を歩けば避けられて、遠巻きに聞こえるヒソヒソ声。そういうのに、こんな俺でも結構傷ついたりする。笑われるの上等で言うけど、悲しい。
 俺はなんというか、先天的に孤独なのだ。
 理解者は弟だけ。
 そして一生増えやしない。
 そういう運命なのだとずっと思ってた。
 ……そう思ってなけりゃ、やってられなかった。
 そしたらある日、人との線引きが上手で糞ややこしい俺とでも付き合いが出来る変わり者がやってきて、彼女を紹介してくれた。
 「僕の運命の人を友達に紹介するのは初めてだけど、照れくさいね」
 俺はそれをきちんと聞いていた。
 きちんと、聞いた。
 だから俺は誰にも言わない。
 俺の運命の女に首から上がないなどとは。
 “どうしたの?”
 ディスプレイにぼんやり浮かぶ文字。その文字を作る黒いレザーで覆われた指。そういう物をぼんやり遠巻きに見ている。
 「なんでもねぇよ」
 “いつにも増して機嫌が良くないな”
 「……別に」
 言葉少なげに俺は目を逸らす。
 彼女には眼もないのに、その眼差しに射抜かれては俺の小さな企みなどすぐに綻びて晒しモノにされそうだ。
 この“デュラハン”という舶来物のモノノケと俺は、なんだか妙に馬が合う。別段何がある訳でもないけれど、顔を合わせば話をするし(まぁ向こうは喋らないのでデジタル筆談だが)、何か困り事があればそれとなく相談したりする。相手が落ち込んでりゃ気が付くし、窘め合ったりもする。……ま、いい友達ってヤツだな。うん。
 そんな妖精サンが、今までやたらに孤独だった男の前に現れた。
 ……そんなの、惚れねー方がヘンだろ。
 おっぱいもデカいし。
 タタタタッっと軽やかなタイピング音。何かを“言っている”ようだが、おれはそれを“聞か”ずに荷物を手繰り寄せて出口に向かう。するとふっと空気が動いて、左腕を掴まれた。結構すごい力で。
 “すぐに帰ってくる”
 ちらっと見た緑色の画面にはそんな言葉が書いてあった。
 「また来る」
 そんだけ言って部屋を出てエレベーターに乗り込む。唸り落ちてゆく閉鎖した小さな空間で俺は「だから帰ェるんだよ」と呟いてポケットから煙草を取り出した。
 たまには人並に感傷にだって浸る。
 俺は任侠を重んじるフツーのヒトだからな。



 13:18 2010/03/10 (13:58 2010/04/01表現追加)静ちゃんかわいいよかわいいよ静ちゃん! 静ちゃんは本人が言うとおり暴力が嫌いで単なる普通の人だと思う。だけどその才能は彼を希望通りの人生から突き落とす。戦え平和島! 取り戻せ静雄!






まずはキスで報復を

 ワタシには身体がない。
 理由はヒミツ。
 死神コートの下にあるのは黒く枯れた茨の絡まり。
 この姿を見るとたいていの人間は逃げ出し、子供は泣く。月さえ雲に隠れる始末。
 でもたった一人だけ、この姿を哀れと泣いてくれる人が居て……ワタシはそれだけで救われる。
 魂の救済ってのは本来こーゆーモンなんじゃないかなーとしばしば思うのよねェ〜。悪い子もいい子も、結局は同じ魂でしょー。……なんて、まあ今までの己の所業を鑑みるにワタシが言えた義理じゃないんだけどサ。
 「あー、また別のこと考えてる〜」
 のっしと死神のコートの上に君臨する17歳の王女が、骸骨を意匠した仮面に指をゆっくり這わせながら熱っぽい瞳で暗渠の下を垣間見た。
 「この時だけはアタシのこと以外考えちゃ駄目って約束でしょう」
 金の糸がさらさら黒い布の上に流れて広がる。
 ああ、夢心地。
 なんて軽い。なんたる満足。想像以上の幸福よ。
 「この仮面は正直なんだ、キスをしたら赤くなるし、悲しいときは泣く」
 だから解るんですよぉだ。言って冷たい骸に彼女が口付けた。
 君は優しい子だねぇ、エリザベス。
 でもぉ……そーゆーことされると……むらむらくるでしょーが!
 「わあ!」
 両肩を跳ね上げてそのまま逆側に押し倒してしまう。
 「わ、わ、わ……!」
 「偶にはワタシも逆襲するよォ」
 「えっえっえっ!?」
 なんだい、赤い顔しちゃってさ。自分がどんなに魅力的か解ってないんだからこの子は!
 手で頭をがしっと掴むとおでこが全開になっちゃって凄くエロい。思わず脂下がるけど、そこは精神力で怖い顔をやめない。
 半開きの口がアワアワ震えて、うっすら汗ばんだりして。
 あーかわいい。
 「ぎゃ、ぎゃくしゅー、て、あ、アタシ、いつも……!」
 「……いつも、なに?」
 ブレブレの声が上擦る感じがゾワゾワしていいね!
 「〜〜〜っ!」
 一言もないくらいぎゅっと目を閉じて縮こまったエリザベスの耳が真っ赤になってておかしい。こんなくらいでまだ照れるのキミは。
 もっと凄いこといっぱいしてんのに。
 「見つめられるの、嬉しい?」
 低い声でささやいたら、ぶるぶるぶるっ! と少女の身体が鋭く震えた。
 「ほら、目を開けなきゃ。視姦の大サービスだよォ」
 コートの下から這いずる混沌のツタが聞き分けなくエリザベスの身体のそこここに伸びてジャケットの裾から、サマーセーターの襟から、ズボンの留め金からコソ泥のように忍び込んでゆく。
 「あっ……! やだぁ……」
 スエードだから洗えないの、と切ない声が頓珍漢なことを言った。
 「そう? じゃあ一番にズボンを脱がなきゃ」
 手で覆うおっぱいをゆっさゆっさと揺さぶってやると、彼女が身悶えるように背を向けてしまった。……あ、そーくるか。
 「ぎゃ!」
 お尻が見えそうなローライズ・ジーンズのベルトラインごとを一本釣りで持ち上げて背中から抱きかかえる格好でホールド。もちろん汚れちゃいけない邪魔なジャケットは取っ払って、ね。
 「ワタシ、ブラジャーの感触好きよ。温かくて柔らかくって、幸福の感触だよねェ〜。エリザベスのおっぱいはおっきーから幸せ度もおっきーしィ〜」
 ふにふにふにふにおっぱいを手のひらに乗っけて耳元でささやいてやる。ワタシに体温ってのはないはずなんだけど……全身すげー真っ赤になってるのは何故カシラねエリザベス♪
 「で、でも! パティの方が胸おっきいですよ!」
 なんじゃそりゃ。
 「形は椿の方がきれいだし!」
 ……はぁ。
 「肌は断然マカのがつるつるです!」
 ――――――はっはぁ〜ん?
 「……エリザベスがオススメするその三人をここに呼んで同じよーに可愛がっちゃえばいいワケ?」
 ばっ! と真っ青な顔をした彼女がこちらを振り向いた。
 髪が鞭のよーにしなって当たる。
 ……いたい……
 「……や、やだ……!」
 泣きそーな顔の王女さまが私の襟元に捕まってそう言ったので、ワタシは冷たい仮面を彼女の唇に押し当てつつ声に出さず言う。

 きみが誰より可愛いことをこれから証明してあげよう。



 08:48 2010/04/26 第83弾ソウルイーターの死リズ。バレスクショで一番幸せで思う存分キャッキャウフフ出来るあたラムより相思相愛なカップル! 完・全・捏・造だけど! お互い頼るものがなくて自分がしっかりしなきゃダメだって立場からフッと降りれる一時があったっていいじゃない!(絶叫)広がれリズ死(←川井のこだわり部分)の波長!! あるみ大画伯しでかしてくださったので、おでも思う存分しでかしてみたがどうか?(どうもこうも






理解なき優しさが辛いよ

 狩沢さんとデェトに行くことになった。デェトといってもまあいつもどおりなんだけれども、わざわざ「デェト」と言うのにはワケがある。
 「狩沢さんてアレですよね、いつも同じ格好で、たまには違う格好とかしないんですか?」
 別に本気でそんなこと言った訳ではない。事実、頻度自体は低いけれど黒尽くめ以外の服装も見たことがある。単に話の間を持たせるために言っただけだ。
 しかしそれにカチンと来たのか、彼女は俺を睨み付けて切り返す。
 「あら! ゆまっちに見せるために何で着飾らなきゃいけないの?」
 そんなこと言われればこっちもカチンとくる。
 「いっつも帽子でさ、若さがないっすよ。あ、もしかして可愛い系が似合わなかったりして?」
 自分でも言ってて違和感以外感じない取って付けた様な煽り文句に辟易するけれど、もう止まらない。
 「そっちこそいっつもラフでさ、ちったぁビシッとスーツでも着てみたらどう?」
 「この髪でスーツなんか着た日にゃチンピラか頭の悪い新成人っす!どーゆーセンスなんすか!」
 結局ドタチンと渡草さんの仲裁が入ってその日はうやむやになったけれど、俺はこう見えて結構根に持つタイプなので、言い合い前に約束してた買出しに、いつものカジュアルではなく、モッズ風の細身スーツで待ち合わせ場所に居た。
 しかしまぁ我ながら似合わないにも程がある。身長がもう少しあればなぁとショー・ウィンドウに映る自分を見ながら少しだけタイを緩めようと胸元に手をやりかけたとき、目の前に信じらんない物が現れた。
 ウエーブしたカラスの濡れ羽色をした髪はふんわりと靡いて、明るいカーデガンとシックなポーチがアンバランスな可愛さを放ちつつ、ブラウンのソフトジーンズがバシっと決まった女の人が俺の目の前で止まる。
 「……あんた、もしかして、ゆまっち?」
 「―――狩、沢、さん……なんすか?」
 唖然。呆然。脅威のなんとやら。
 二人で互いの格好を上から下まで観察するように眺めて、ボソッと言った。同時に。
 「……にあう……」
 その声が聞こえた途端に吹き出した。二人とも。
 「あはははははは!なにそれ!あたしがスーツ着て来いっつったから!?」
 「狩沢さんこそ!なんすかそのラブリーなカーデガンは!靴にまでフリル付いてる!」
 ひとしきり笑い合ってから当初の目的通りにとらのあなでも行こうかという話はどっかへいってしまって、珍しくただ散歩したりスターバックスに立ち寄ったりしながらいろいろ話をした。
 取り留めのない話を。
 目的のない話を。
 思えばそんな話をするのは初めてなのかもしれないけれど、そんなこと気にしてる間もないくらい面白かったから次々と平凡で下らなくて見っともない馬鹿な話を口にする。普通なら言わないようなことさえ話題に上る。
 自分の残虐性とか、そういう、結構立ち入ったことを。
 「だからねつまりサドだとかマゾだとかそういうんじゃないの。私の趣味趣向は。もっとこう、なんつーの、魂に染み付いてる方向性っつーかさ」
 「でも俺は誰かに止めて欲しかったけど。ブレーキの壊れた車にいつまでも乗ってる度胸ないっすもん」
 「私は逆。止められるのが解ってるからアクセル踏んじゃう」
 茜差す灰色のビル群を眺めながら、もうじき闇の中に瞬くだろう未だ沈黙した看板を想う。
 「ふうん、そんなもんすか」
 「……なに、怖くなった?」
 いつもと違う雰囲気の彼女がいつもの彼女と同じ顔で笑って言うのが変な感じ。
 「別に怖かぁないっすけど、ベツモンだなって思って」
 自分の性格はどちらかと言うと“平和島静雄の属性”に類するのだと思う。あそこまで突き抜ける勇気もなく、かといって隠し遂せるほど優秀でも器用でもない。だからと言ってそれ以上の才能に恵まれているかと言えばまたコレも否。
 俺は単なる粋がった哀れな夢見る一般人でしかないという、この残酷な事実!
 頬杖付きながら名も知らぬビルの屋上の手すりに身を預けた。その格好が可哀想にでも見えたんだろうか?
 「寂しくなった?」
 頬に寄せられた唇がくっついて、離れて、ペコちゃん人形みたいなわざとらしい顔の彼女が居た。
 「ほい、一人じゃないおまじない」
 ケラケラケラといつもの狩沢さんの顔をしたいつもの狩沢さんじゃない人が笑うので、俺は意味もなく泣けてきた。
 「……帽子」
 「は?」
 「帽子かぶって、いつもの駄々長いタイトスカート穿いて」
 「…………」
 「髪の毛アップにして、ゆって」
 「な、何を」
 「一人じゃないって」
 声が擦れててみっともねーなー、と、頭の中に居るいつもの俺が言った。
 ほら、なーんちゃってっておどけて言えば今なら間に合う。引っかかった引っかかったって笑い飛ばせば助かるかもよ?
 頭の中の臆病者の俺が必死でそんなことを俺に急かすけれど、何故だか俺は頑としてそれ以上何も言わない。
 「……ゆまっち」
 「あい」
 「パンチとビンタとどっちがいい?」
 「……はい?」
 「しっかり目ェさませ!!」
 音高く池袋の街にビンタの音が響き渡って、呆然と頬を押さえる俺が立ち尽くしてると、泣き顔で困っててどことなく悲しそうなのに笑いも入っているという凄く表現しにくい顔をした狩沢さんが俺の身体に腕を回した。
 「一人なワケないでしょ! ドタチンも! とぐっちも! あたしも! 勝手に消すな!」
 ……あーあ、このスーツ、借り物なんだけどな。
 ファンデーションって何で落としたらいいんだろ。
 びりびり痛痒い頬をぬるい風と共に撫でてゆく夕暮れの陽が無性に煩わしい。
 そーじゃないんだけど……まあ、いいや。
 俺は溜息も吐き忘れたまま目を閉じて、彼女の身体に腕を回す。



 23:35 2010/04/24 (表現追加22:40 2010/04/30)遊馬狩お絵かきチャットに乱入して即興で書いてみた。原作を読む前に書いて、原作を読んでから手直し。成田先生“突き刺して貫くの”好きねェ。ゆまっちのお姫様抱っこネタで一発書きたいの心。






幻想を追っかけるのが人間の仕事よ

 甘い事を……
 しばらく前なら一笑に伏したろうにと思う彼は、いま笑わない。
 横たわる小さな体は不完全だ。
 未完成、という意味ではなくて。
 自らの気味悪いまでに細く白い手を思う。視界に入る机の鏡面に映っている己の赤い目はその色に反して燃えてなどおらず、どこまでも冷たく、味気ない。
 部屋にはこの気味悪い真っ白な少年と、小さな少女だけしかいなかった。彼らには保護者と呼べる人間が二人ばかりいたはずだが、そのどちらも出かけているようだ。
 疲れたような眼をした少年は、その紅い彩光で小さな少女を眼差したまま動かない。胸のあたりが微かに上下するのを追っているのかも知れなかった。……まるで、生きていることを確かめているかのように。
 部屋にある窓はすでに闇色に塗り潰されており、時折チラつく光だけが頼りだというのに、己の目の赤さだけが際立っている。
 悪魔のようだ、と少年は思った。白い悪夢だと揶揄された事を未だに覚えている。そして、それをついに受け入れてしまった事も。
 「……ケッ」
 鼻で嗤ったつもりが、何故か違う風に出力されたことに違和感と怒りが湧いた。
 ここで両手で顔を覆い、声高らかに泣けばスッキリするのだろうか?
 腹立ち紛れに飛び出して街中を火の海にすれば気は治まるのだろうか?
 それとも、自分を――――……
 そこまで進んだ思考は、そこで止まってしまった。彼が止めたのではない。
 床に突き立てていた腕から広げられた手の指を、細く頼りない白い中指を、さらに細い指がぎゅっと掴んだのだ。
 まるで、赤子が母を求めるように。
 「――――――――。」
 少年は絶句し、嫌悪感を抱き、平静を取り戻し、むず痒く思い、そしてその指を掃う事などせずそのままにしておく。
 小さな少女の呼吸はなだらかだ。
 いつもの様になだらかだ。
 そんな事を思う自分が滑稽で賤しく哀れだと感じる。  そして、場違いにも程があると。
 この手で縊り殺してきた奴らと、こいつと一体何が違うというのか。何かが違っていたから、こいつは生きあいつらは死んだのか。
 答えなど、ない。
 胸に痛み。
 頭痛。
 腹の底から立ち上る嘔吐感。
 「おお、俺まだ人間やめてねェのかァ?」
 とっくの昔にこんなもの失くしたと思っていた。失くしたからこそ今まで生き延びていたのだと疑わなかった。
 だから“平気と信じて”殺して来たのに。
 顔を隠すように目を伏せた少年が呼吸を荒くし掛けた瞬間、それが聞こえた。
 「あ、くせ……らー」
 少女はそれだけ言ってまたむにゃむにゃと口を閉じる。いつもの寝言だろう。
 「………………。」
 少年はため息をついて少女に掛けるタオルケットを探そうと努力はした。だが、左手を動かせないこの状態で出来ることなど限られている。しかし彼女に風邪を引かせるのは忍びない。
 「〜〜〜〜〜〜ッ」
 少年は“しかたなく”小さな女の子に自らの身を寄せて目を閉じた。しかたない、から。



 18:03 2010/05/27 (06:03 2010/07/12収録)同人誌没原稿救済。もしかしてこれが初掲載か、とある魔術の禁書目録。通行止めとはミラクル短縮形だといつも惚れ惚れする。いっつーさんは根性なしのままでいい。根性なしのままがいい。今(21巻発売直前))原作がとんでもないことになってるからこそ。
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