バラックの死に損ない

 「ネェ、ソウルくん」
 一人でテレビを見ながら塩パスタをもさもさ食ってた所に、珍しくブレアがやってきた。俺とブレアは間にマカを挟まないと中々に仲が悪い。ブレアが俺に敵意を持っているのがその一番の理由で、俺がブレアに敵意を持っているのが二番目の理由。
 「あんだクソ猫」
 「あにゃ、ツレないお返事。マカはぁ?」
 「知らねぇよ」
 ブレアは夕方5時ぐらいに出勤するため、いつものイカれた乳と尻の強調されたコスチュームに大きなつばの三角帽子を被っている。化粧しなくともそれなりに見栄えのする派手な顔が歪んだ。
 「またどうせ怒らせて追い出したんだにゃ」
 「DV夫か俺は」
 「ふっふぅん、ソウルくんにマカを養っていけるワケないもんねぇ〜」
 にこやかに俺を覗き込むブレアが半分程度平らげられた塩パスタを一瞥してさらに嗤う。
 「いつだったかマカが入院した時もソレ食べてたねぇ、ねえなんでマカが居る時は手の込んだ料理作るのに一人のときはそんなの食べてんの? 死武専入った時はジャガイモも満足に剥けなかったくせに」
 ブレアはマカが居ないと魔女根性丸出しにして俺を追い詰める。かといってマカに馴れているわけでもない。ただ大人しくネコとしての立場を全うしているだけ。
 「アタシ、ソウルくんのコト好きよぉ。マカにお願いしてるの。飽きたらお下がりチョウダイってね」
 きらきら紫色に光る長い爪が扇のように広がってけらけら笑う口元を覆っている。
 昏い瞳。真っ黒な髪。よく研がれた爪。まごう事なき猫の化身。その口元にルージュを引けば、あっという間に俺の臓物を貪り食うイメージ映像の出来上がり。“あぶく”の立つ血の涎を巻き上げて鋭い牙が闇夜に輝く。
 「あの子を食い物にするつもりなら止しときなさい。あの子と一緒に生きてくつもりなら腹を括りなさい。あの子があんたの為を思うならば従いなさい」
 金に輝く鉛のような重苦しい目が長いまつげに飾られながら俺を詰る。悦楽や苦行とはかけ離れた風に。
 「ハァ? なんだよそれ」
 「でも、そのどのつもりもないソウルくんはまるで」
 そこまで言って猫が押し黙った。くねくねと曲げていた身体をすっと立ち上がらせててもまだ言葉を発しない。
 「まるで、なんだよ? 犬だの奴隷だの囚人だのはもう聞き飽きたぜ」
 ひらひらと片手を揺らして追い払う仕草。聞きたくもない罵倒の先を促しているようですぐやめた。
 いつの間にやらギラギラした目で獲物を仕留める数瞬前の猫が舌なめずりをして高く舞い上がった。全身で俺を抑え込む算段らしい。おお、血が噴き出る血管が瞼の裏を舞っている。
 「まるであんたは×××××」

 そこで目が覚める。心臓が高鳴っていて、汗で気色が悪い。
 掛け布団の上には伸びた黒猫が俺の胸の上で尻尾をパタパタとやっていた。
 「……おい、ブレア」
 「んー」
 「俺の寝床に入ってくるとまたマカがうるせぇぞ」
 「……とかにゃんとか言っちゃってェ、やきもち焼かれていい気分デショ?」
 かんらかんらと朝っぱらから高いテンションでブレアが笑う。そういや黒猫は子供の寝息を食って取り殺すそうだな。
 ……どいつもこいつも。



 17:01 2009/10/22 ソウルくん強化月間なので。黒血の狂気とブレアの魔力は親和性が高そうだなーと。ソウルは普段自分を追い詰める内罰タイプ。困難極まったら味方を率先して撃つ他罰タイプ。そんな人並みに快楽に弱い、好きな子補正がちょっと多目なだけの普通の男の子。×に入る単語は最初書いてたけど。当てたらえらい。もしくはエスパー。或いは狂人。マカに捨てられたらブレアのヒモになればいいよソウルと常日頃から思っている俺ですが、皮ジャケ+ホットパンツのブレアが鎌持ったら似合い過ぎるにも程があるので誰かソウブレを俺に!






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