背中だしてごらん

 ひやりとした汗を拭う。小さなうっすら傷跡の残る背中の汗を拭う。
 「寒いだろ」
 返事はない。簡単に握りつぶせそうな肩は火の様に熱くて、次から次へと汗が吹き出している。
 気付いてからもう半日、かなみは変わらずこんな調子だ。
 医者に見せたら風邪だと言う。栄養不良で飲み薬の効きが良くないそうだ。君島に点滴とか注射とか、そういうものを頼もうとしたオレを医者が止めて「とにかく解熱剤を飲ませて一日様子を見よう」というので家に連れて帰ってきた。
 汗をこまめに拭いて、よく水を飲ませ、果物のすりつぶしたものを与えろというので、かなみが寝たらリンゴでもパクってこよう。
 ぐったりとして反応しないかなみの小さな腕を持ち上げてタオルで拭う。
 女の癖にあばら骨がごつごつういてて、自分がガキだった時を思い出す。一日一食、食えりゃ御の字だったあの頃を。腹が空き過ぎて吐き気と頭痛が止まらなかったあの日々を。
 「……気持ち悪くねぇか?」
 やっとのことでこくんと頷いたかなみの生気のない視線はどことも知れぬ彼方を彷徨っている。弱々しく儚いささやかな生き物がオレの腕の中でやっとの呼吸を続けていた。
 ああ、これは何かの報いだろうか。オレが今まで踏みつけてきたものの呪いだろうか。
 柄にもなく項垂れるオレを憐れにでも思ったのか「だいじょうぶ」と、かすれた声でかなみが精一杯の強がりを言う。目はまだ虚ろだというのに。
 あれだけ固く絞った濡れタオルが心なしか重くなったような気がする。さぞ寝間着もシーツもびしょびしょだろう。
 「……じゃ、とっとと着替えて寝ようぜ。シーツも替えるから……」
 かなみが胸の前に抱えるようにして持っている寝間着がわりの古いTシャツとシーツを一緒くたに引っ張ったオレに、かなみがまたあのやっとの声で囁くように言った。
 「じぶんで、する」
 「……体支えてなきゃ倒れるのにか?」
 「だって、はずかしいもん」
 なんだか驚いてしまった。こんな時でも、こんな小さくても、女なんだなぁと。
 「風呂と同じだろ? 恥かしがる事ねーって、病気なんだぜ」
 うだうだと言ってる間にもかなみの素肌には冷たい汗が滲んでいる。早いこと着替えさせないことにはこっちがハラハラして正気で居られない。
 「明るいから、やだ」
 見るの見ないの下らない言い合いの果てに、結局追い出されて部屋の前に置いてある腰掛に座りながら、無性に失敗したような、悪いことをしたような、何ともいえない嫌な気分になった。
 この一大事に恥かしいから裸を見られたくないなんて言う女の強さに少し尊敬に似た畏怖さえ覚える。
 「……女ってのはスゲェな。死ぬ時でも生きることを考えやがる」



 16:07 2008/09/22 改稿16:28 2008/09/25 暮らし始めて最初の冬にかなみが大風邪を引いたというネタを作ったのだけど、上手く練りあがらないのでエピソードを散らしながら書いてみる罠。エロパロは微エロ風味、闇鍋はカズくんとかなみのそれぞれの戦い。カズマを全肯定する同じ口で当たり前に拒否や否定出来るかなみは頼もしくていい。






アルカロイド

 「漂白剤? その水」
 大笊に抱え込んだもやしの水切りを終えた彼女が素っ気無くそう訊ねた。
 「えっ」
 「直接触るなってあれほど言ってるのに。
 アンタはここの下っ端以前に、料理人なのよ。プライドを持ったらどうなの」
 ぷつぷつ細かく音がする。きっともやしの根切りをしているのだろう。大方の照明が落とされた薄暗い厨房には、上がり作業をしている僕のほかにはもう誰も居ないと思っていたのに。
 「ははっ!ゴム手袋、失っちゃって〜」
 バカ野郎と詰られると思っていた。僕はそういうのが得意な方なので。
 「望月か」
 その名が出る事に少しだけぎくりとした。
 「……ロッカー、鍵がついてるはずなんですけどね〜」
 僕は否定も肯定もせずに笑った。笑うしかないじゃん、こんな時。他にどんな顔が出来るって言うのさ。僕だって男なんだよ、見栄くらい張りたい。
 「――――――使ってるの向かって左側の一番端だろ?」
 「よく、ご存知で」
 「あすこの鍵の番号は2261。皆知ってるんだ。新人はね、皆あすこを宛がわれる。
 アンタでもう何人目だったか忘れたわ。ちょっと腕が立つと財布だの、コックコートだの、音楽プレイヤーだのが無くなったって騒がれて、ロッカーを暴かれて、そんで濡れ衣着せられて放り出される。あいつのいつもの手なの」
 「じゃあ僕は大丈夫だね!ちっとも腕が立たないから!」
 ぷつぷつ、ぷつぷつ。音は止まったりしない。規則正しく、ぷつぷつ、ぷつぷつ。
 「嬉々として言える事か!」
 「いいんだ。キリコさんが僕の事ちゃんと見ててくれるから」
 「……脳天気ねアンタ」
 「アンタ、じゃなくて小此木。小此木をよろしく」
 ぷつぷつ音がする。途切れる事の無い根切りの音。リズミカルで淀みなく、ぷつぷつぷつぷつ。
 「でもさ、僕にも料理人としての気遣いくらいあるよ!
 手を使う商売だからね、ハンドクリームとか塗らないんだ。味が染み付いちゃうでしょ?
 まぁ、僕はまだ食材の下拵えもさせてもらえないけどさ、いつチャンスが巡ってくるかもしれない。だからね、漂白剤とか関係なく、やっぱ手は荒れちゃうんだよ」
 僕はそれ以上何も話さず、ダスターの漂白を続ける。ざぶざぶ、じゃくじゃく、水が跳ねる。
 ざぁーっと水を流した音が静まって、やっと気付いた。
 ぷつぷつ音がしない。
 不思議に思って彼女が座っていた筈の作業台に目をやる。大きな胸の可憐な女の子はそこに居なかった。
 いつの間にそこに立っていたのか、僕が気付かぬうちに右手に馬油の小瓶を持ったキリコさんが僕の背後のドアからぬっと顔を出している。
 「もっと腕が立ったら名前で呼んでやるよ新人」
 商売道具の手入れの悪さは職務怠慢だ。仕事が終ったら必ず付けな。
 素っ気無くそう言って大笊に入っている根切りが終ったもやしと、もやしの根っこがどっさり入ったビニール袋を抱えて彼女はいずことも無く消えていった。



 11:57 2008/11/10 ピーマンなどの苦味成分。植物毒という解釈。キリコを解毒せず飲み込んでしまう奴が来るのはもうちょっと先の話。馬油(バアユ)はハンドクリーム代わりに使える。






春の夕暮れに

 閑散とした第3図書室。地下の第1図書室や教官室の隣りの第2図書室と違い、所蔵されているものは軽めの読み物が多く、図書室というよりは自習室の性格の方が強い。監督役の先生は5時を過ぎたら準備室の鍵を閉め、大抵は職員室に引っ込んでしまう。
 「やめろ。……やめないか、こら」
 階段を7つも登って渡り廊下を4つも経て、やっと到着する不便な場所にある図書室。
 「頼む、やめてくれ、ほんとに、おい」
 夕日が落ちる速度が随分遅くなっている。教室も生暖かく、ストーブは二週間くらい前から沈黙したままだ。
 「聞いてるのか、引っ張るなというに」
 図鑑だの辞書だのの背表紙がキッチリカッチリ並んでいてお気に入りの本棚の前。ただでさえ人目につきにくい図書室の更に人気のないブース。理由は簡単、窓のドまん前でブラインドを下ろしていても暑いのだ。故に冬は大人気だが、このところの陽気ですっかり訪れる人も減った。
 「……こんなとこ見つかったら……」
 「らいじょうぶらよ、このきょうしつ、られもいらい」
 とろんと蕩けたか細い声は完全に呂律が回っていない。おれには見えないがきっと目も光が失われていて、いつものように狂ってしまっているのだろう。
 「ここは学校だぞ!」
 悲鳴と言っても過言であるはずがない。
 「らから、なに?」
 いっそおれも狂ってしまえば楽なのだろうか。……いやいや死神たるものが何と不埒な考えを。
 「ラグナロクいい加減にしろ!クロナを元に戻せ!」
 だが沈黙。いつもやかましいほど口出ししてくる性悪武器は毛程も姿を現さない。
 「クロナ、気をしっかり持て。狂気なんぞに屈してどうする。お前はもう秩序と道徳を司る死武専の一員なんだぞ」
 全身の力を振り絞って快楽に耐える。ご高説を垂れるおれが陶酔に呑まれてたまるか。
 「らめらよ、きっろ。うそついちゃ、らめ」
 クスクス笑い声が聞こえる。小鳥がさえずるような少し高い音。たった一言の破壊力。
 「きっろ、きもちいーから、こうらるんれしょ?」
 スラックスの上から摩られている。興奮を焦らすような緩やかさと、現実を突きつけるような大胆さで。
 「すっごく、たってる」
 ぞぞぞぞぞっと背筋に何かが走った。怖ろしいものを見た時のように。喜びで息が止まった時のように。
 「……あ、あたりまえだろ!そんなとこ触られたら男なら誰だって立つわ!」
 「あは。またうそついた」
 いつものクロナを知っている連中なら度肝を抜かれるだろう。こんな風に自然に笑う彼女を見たら。
 「きっろ、こうされるろ、すきなくせに」
 左の腕がおれの腰の下に回され、ぐっと尻をつかまれた。そして右手がジッパーを摘まんで引っ張りおろす。まずい、と思った時にはもう何の手立てもなくて、ただされるがまま。
 「てれ、しようか? それとも、いつもみらいり、くちれ、してほしい?」
 囁く声がおれの頭を殴りつける。ばかめ!ばかめ!ばかめ!
 「だ、だめだっ……こんな所で正気の沙汰じゃない!」
 「ちつりょと、ろうろくをまもる、しりらみはまのむすこら、うそついれも、いいろ?」
 「クロナ、落ち着け……いいか、腹に力を入れろ。頭の中を冷静に保って悦楽に反逆するんだ。それはお前を闇の中へ押し戻す悪魔の呼び声だ。決してお前を幸せに導いたりはしない」
 おれは必死でクロナの肩と右腕を掴み上げて押し留める。こんな細い腕の女の子に力で押されるなんて、おれも全く焼きが回ったもんだ。
 「…………でも、こうしないと不安なんだよ」
 クリアーな声が鼓膜をノックした。
 「触れてないと不安なんだ」
 鮮やかな紫の眼差しが夕日に照らされてアメジストにも勝る輝きを湛えている。こぼれそうに光る大きな瞳に射抜かれ、おれは眉一つ動かせない。
 幾筋も架かる唾液の橋が唇と唇の間に渡され、その薄暗い奥から地獄の底のように赤い舌が這い出して、おれの股間に埋もれた。ズクズクと甘く痛むそこを這いずり回って、ついに下着の隙間からの侵入が開始された。
 「ひっ……!」
 ちゅく、ちゅく、ちゅくと小さな水音が響いている。夕日に暖められたこの生ぬるい空気と同じように、生ぬるい舌が肌に這っている。痛みすら感じる快感が怒涛の勢いで俺の後頭部をいい様に嬲った。
 「あ、あ、あ……っ!!」
 唇は柔らかく、舌はざらざらと温かい。ぬるぬる擦れる頬の内側の肉が執拗におれの粘膜を痛めつけて、時々当たる歯がおれを現実に引きずり戻す。
 「あっ、あっあっ……あっ…く…!」
 へなへなと腰が砕ける。両手に力が全く入らない。全身の一体どこに気を配れば背筋を伸ばせるのかさえ思い出せない。
 「く、くろ、な……!だめだ、やめろ、やめろやめろ」
 「えや」
 うっすらと耳に届いたそんな不鮮明な合図が最後。
 クロナの動きが急にメリハリをつけて激しさを増し、いつの間にかシャツの間から差し込まれた左手がおれの背の弱いところやわき腹を擽っては抓る。鋭い快感と鈍い痛みが交互に繰り返し、抗議の間も与えられないままに絶頂へと追いやられてしまった。
 「アッあっ……っぃぃぃ……!」
 「……んぁ……ん、ん、ん……」
 浅ましくも吐き出している。
 自分がおぞましい量を吐き出している。
 そしてそれをクロナが嚥下しているのがわかる。彼女の喉を叩いている感覚がわかる。最悪のエクスタシー。背徳に縁取られた忌まわしき恍惚。
 ずるずる、とはしたない音をわざと立ててクロナがおれを強く啜る。痺れるような甘痒い痛みと共に、己の全てを引っ張り出されるような気がした。
 「ぷぁぁ……!」
 爽快感さえ携えて、クロナのアメジストの瞳の土台が朱色に染まっていた。おれはそれを掛け値なしに美しく可憐だと思ってしまった。……ただし、けだものの美しさではあったが。
 「うふぁ……いっぱいでたよ、キッド……」
 嬉しそうに呟いた瞳に光のないクロナの顔は、おれに誉められるのを心待ちにしているようだった。



 21:15 2008/11/07 うははは。闇鍋でドエロとか。もしかして初挑戦か。






Eli, Eli, Lema Sabachthani?

 満足げに彼女が笑う。うっとり惚ける様な悦びの表情。女神のような、娼婦のような、母のような。
 「いっぱい出たよ」
 もう一度、確かめるようにそう呟いた。ぶくぶくと泡立つおれの心臓がひどく騒がしい。
 「……ああ、自己新だ」
 「うん!」
 母に誉められた幼児のように素直な返事が胸に刺さる。彼女の欲しているご褒美は頭を撫でることでも飴玉を口に放り込んでもらうことでもない。だが紙風船を膨らますことをねだるような軽やかさで彼女は求める。
 交合を。
 「次はここに出して」
 机の下から這いずり出してきたかと思ったら、机の上に広がっているノートと参考書、筆記用具の上にのっしと腰を落とし、ダダ長く漆黒のようなスカートの裾を唇で噛んで持ち上げた。もちろん両手は唇から遠い両端を持って広げている。
 「……下穿きはどうした」
 「邪魔らものふぁらい方は好きらろ?」
 「――――――お前は仕置きされたいようだな」
 ころころと鉛筆が床に落ちた。鋭く削った芯が折れた音がしたような気がする。いつもなら取り乱そうものなのに、今は構うことさえ出来ない。……それとも既に正気を逸してしまっているのか。
 「よかろう、存分に折檻してくれる」
 スカートの奥の暗闇はこめかみをピリピリと突き刺す甘いような酸っぱいようなとろんとした香りで充満していて、何とも言えず胸が踊った。するすると両腕が勝手に彼女の尻肉を捜して伸びる。自動的に。
 「口に含んだ裾を勝手に放すことは許さん。いいと言うまで咥えていろ」
 赤く濡れそぼった傷口にも似たスリットは、彼女の髪と同じ色の彩りが添えられている。その申し訳程度の性毛に口付けてグリグリと唇で突いた。簡単に沈む柔肉の味が口の中に期待と共に広がってゆく。
 「あはぅ……!」
 甘い声が聞こえて視界が一層薄暗くなる。
 「どうした。背筋を伸ばさんか。暗くて何も見えん」
 ふるふる小刻みに震える太ももとその間に力が篭り、ゆっくりと視界が明るくなったのを認めてからもう一度同じように唇を宛がう。今度は口の中の舌を少し尖らせて、差し込むように。
 「ふぅ、ふぁ……ア!」
 ともすれば仰け反りそうに蠢く彼女の腰を捕まえたまま、煩わしいまでに痙攣する肉襞を掻き分けるように舌を埋めた。差し込んでいるこちらの方がビリビリ痺れてくる。黒血を持つというのは伊達ではないな、さすが粘膜には少々堪えるようだ。
 『いや、ただおれが興奮しているだけか』
 そっちの方が素敵だと思ったので、おれはその案を採用する事にした。おれは彼女に酔っているのだと。
 『では舐め取ることにしよう。クロナの毒の全てを』
 ピチャピチャ大きな音を立てて、ずるずるはしたなく啜り上げて、クチャクチャいやらしくかき混ぜてやる。狂え、狂え、狂え。おれに狂え。狂気にではなく、黒い血にではなく、その身の不幸にではなく、このおれに狂え!
 「はっ!はっ!うぅぅ!いは、いは、いはぁぁ!」
 おれの曲げた背に爪が立てられて、Yシャツをガリガリと引っかく音がする。ベルトとズボンにまで爪を立ててくれるなよ、そんなところに傷がついたら執事長にどう言い訳すればいいか分からない。
 「いや? なにが嫌だ。腰を捩っておれの舌に押し付けてくるくせに」
 「いは、いや、もっろ、もっろふよふしへふんらひゃ、ひゃらぁ〜」
 「……何を言っているのか、サッパリ分からない」
 「ひりふぁるぅ〜わひゃっへるふへひーっ!」
 「意思疎通が出来ないのは厄介だなぁ、クロナ」
 「ひっろ、ひっろ、おふぇはい、おへふぁいぃぃ〜……!」
 「聞こえんな」
 闇の中で聞こえる彼女の切なげな泣き声は激しくおれをいきり立たせる。だがそんなことを気取らせるつもりなど毛頭ない。舐め取る彼女の蜜の味が変わってきている事ももう十分知っているが、ここで甘やかしては折檻にならぬ。
 「品のないフロイラインには相応の罰だろう? 存分に悔い改めるがいい」
 ぺたんこの胸がおれの肩に当たっている。服を着てしまえば完全に断崖絶壁、服を脱げばほんの少しのふくらみがある事を知っているのは……ラグナロクを除けば……おれだけだ。それに触れた事のある奴は、おれだけのはずだ。
 「もうだめ、我慢できない……!お願い、入れて、入れて、イカせて、狂っちゃう……!」
 切迫した小さな悲鳴が聞こえて、おれは尻を嬲っていた右手をスカートの中へ突っ込み、おれの涎と愛液でドロドロになったクロナの入り口を強く擦り上げた。
 「い、ヒィ!? やだ、やだ!やだぁ!指なんかやだ!キッドの、キッドの……ッ!」
 中に入った自分の唾液の全てを掻き出すように激しく、テンポ良く、心を込めて、擦り上げる。何度も、何度も、何度も。
 「アッアッアッ!あっ!ああっ、ああぁ、ぁあぁぁ――――――ッ……!」
 机がガタガタ揺れた。
 クロナの尻の下のノートがガサガサ音を立てている。きっと目も当てられない位くしゃくしゃになっていることだろう。教科書には致命的な折り癖が付いているだろうし、下手をしたら平綴じの部分が割れてしまっているかもしれない。
 「……あはぁ、アはァ……!はぁ、はぁ、はぁ……!」
 指を差し込んでいる肉の壁がびくんびくんと激しく脈打っている。皮のカフスボタンは無事かな? びしょびしょに濡れてしまっていなければいいが。
 「ひ、ひどい……ひどい、キッド……!指でなんて、ずるいよぉ……」
 ふにゃぁ、とみっともない泣き声を上げる割には息切れで不鮮明なセリフ。おれの肩には破裂も辞さない心臓の鼓動。
 「……約束を破った罪人はこうなって然るべきだとは思わないか?」
 おれは精一杯の皮肉ったらしい声を作り、口角と眉を出来うる限り釣り上げてそう言った。



 13:04 2008/11/10 キリストの最後の言葉「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」 闇鍋でドエロ第二弾。鬼畜キッドのターン。






あいしてるよ

ねぇ脱いで
ハァ?
服、脱いでって言ってんの
大胆なこと言い出すなぁ
いいから脱げっつってんのよ!
・・・誘ってんのか?ほんとにシちまうぞ?
何の話よ!服を脱げって言ってるだけでしょ!
・・・あ、そ。
「やっぱ残ってるね」
・・・そら、まぁ。残るわな。縫合した奴が縫合した奴だし。
・・・・・・・・・・。
なんだよ、まだ気にしてんのか
・・・・・・・・・・。
もう全然痛くないし、化膿止めだって飲んでない。
・・・・・・・・・・。
俺の新しいトレードマークってことで納得しろよ。な。
・・・・・・・・・・。
じゃこうしよう。肩んとこの傷の一番上にファスナートップの刺青を入れるんだ。
・・・・・・・・・・。
あれ、外した?
ばか。
このファスナーを開けるとフワフワの綿が飛び出してソウルくんしぼんじゃうの。
ばか。
だから開けないでね、っつう。そういう。
ばかぁ・・・!
泣くなよ。笑えるだろ。おっかしいじゃん。
「笑えないよ、笑えるわけないでしょ」
でも、俺、お前に笑ってもらえないと傷口がスゲー傷むんだ。苦しい俺を助けてくれねーの?
そんなのずるい
男ってのはずるいモンなんだよ、いい加減解れ
ソウルのばか
ばっかでぃース

 それからだ。マカがエッチの度に傷を舐めるようになったのは。
 ぺろぺろぺろぺろ、縫合痕をあの小さくて熱い舌で舐める。
 擽るように、慈しみに満ちた……えっろい仕草で。
 俺としてはエッチのメニューが一個増えたので大万歳なワケだけど、やっぱこうね、胸に来るもんがあるよ。
 ……バカな女だぜ、まったく、本当に、バカ極まりねぇ。
 職人のお前を命懸けで守るのは俺が武器だからだけじゃねえよ。
 ――――――わかれよ、そんくらい。
 ――――――わかってるよな、そんくらい。



 13:21 2008/11/10 55弾、やっぱりソウルイーター。どんだけ書くねーん。エヒャヒャヒャヒャ。乗りに乗ってるノリノリボーイやなぁ自分? ソウルイーターはスレに落としたものの収録ばっかでごめんに。そのうち新作も……と思っているが、これ以上思わせぶりなことを言うのも忍びないので未定。
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