増長と傲慢

 あのくそやろう
 アパートまで引き払いやがって、手も足も出ないじゃんか
 中国から帰ってきて幾日も経たないってのに。もちろん行き先はおろか理由さえ誰も知らなかった。あの小此木にまで顔も合わせずふらりと居なくなっていた。
 あの馬鹿が。ふざけんな、犬だって三日飼えば恩を忘れないんだぞ。
 ……狂犬め!
 胸中で口汚く罵り、ジャンの元アパートを後にする。
 「……その顔じゃ居なかったみたいだね」
 バイクにもたれてメットを抱えていた小此木が、あたしの顔色を伺う。
 「中国行く時に引き払ってたみたい。違う人が入居してたわ」
 「――――――じゃ、これで早速手がかりはゼロか」
 ふ、と短くため息をついて小此木が持っていたメットをあたしに寄越した。
 「あんた唯一の友達でしょ?他に心当たりないの?」
 さほど動揺を感じない小此木に皮肉のひとつもぶつけてみたけれど、こいつは本当に根っからのバカだから、皮肉を皮肉と受け取らなかったようだ。
 「あれぇ?“ただの従業員”のジャンのこと随分気にかけるんだねぇ?」
 「あたりまえよ!オーナーに挨拶もなしに店をやめる店員がどこにいんの!」
 「……ソデスカ。」
 メットをかぶったままの小此木がこもった小さな声でつぶやくように言った。
 あたしはメットをかぶり、エンジンをかけた小此木のバイクの後ろに乗る。そういえばあいつの趣味もバイクだったかな。……いや、あいつは小此木と違って料理のほかにバイク弄りなんて高等な休暇のすごし方をしているとは思えない。あいつには所詮バイクなぞ『足』でしかないに違いない。
 「ま、今日一日は付き合うって約束したからね、言われればどこでも行くけど」
 多分歩き回ったところで意味ないと思うな。僕たち行き先も知らないわけだから。
 ワン!とアクセルが開かれて体ごと持っていかれる。ぎゅっと小此木の体にしがみつき、空気の粘度に悪戦苦闘した。
 「中国でなんか聞いてないのー!?最近興味がある食材の仕入れとかさー!」
 「しーらーなーいー!向こうでもほっとんど個人的な話なんかしてないもん!」
 「……キリコさんてさー……〜〜〜〜〜」
 「あー!?なんてー!?きこえない!」
 「〜〜〜〜〜〜」
 「聞こえないってばー!大きな声で言ってよ!なにー!?」
 「三年前と全然変わってないーっ!もちょっと譲歩したらどうー!?」
 「あたしがあいつに何を譲歩してやる義理あんのよ!意味わかんないわ!」
 「――――――キリコさんがそんなんだからジャンと平行線なんだよ――――――」
 はぁー?
 そこまで言ったら、ますますバイクのスピードが上がって息をするのも億劫になるほどの風が体という体を切り裂いてゆく。ビシビシと自分の髪がメットに当たっているのが分かる。すさまじいスピードと振動、それから爆音。
 あたしはもう必死で小此木の体に掴まり、それ以上は喋らなかった。
 あたしはあたしだ。変わらないし変えるつもりも無い。それで平行線を辿ろうがあたしは別に平気だ。つーか平行線以外にあたしとあいつの関係はない。
 「二人とも頑固者だからなー。こりゃジャンの方が折れるしかないかー」
 小此木の声がそんな風に聞こえたような気がして、そっちの方がナイナイと吹き出しそうになった。ほんとにこいつ、本物のバカタレだわ!



 1:37 2008/06/01 46弾はなんとバレスクショ初!チャンピオン作品の「鉄鍋のジャン!R」です。びっくりした?俺もビックリした。今日も元気にマイナー路線突っ走ってるよ!ジャンとキリコはお互い子供すぎるので誰かが強烈につつくか、かなり長いこと二人を同じ箱に閉じ込めとくかしないと進展しそうにもねえ!今週のチャンピオンがラブコメ強化ウィークだったので満を持して登場。いつかいつかと狙ってはいたけど今週号(26)がなかったら絶対書けなかったよ。これであとマガジンもの書けば4大週間少年誌制覇だね!……マガジンKC一冊たりとも持ってねぇ!(実話)……最近気になる少マガ漫画……ジゴロ次五郎?(もうとっくに完結してます






これは合法ではない。一部の合意である。

 「小此木」
 なに、呼んだ?
 僕が振り向いて返事をすると、長い髪を左手で持ち上げて艶めかしいうなじを曝した彼女が半開きのワンピース姿の背を向けていた。
 「ホックとジッパー留めてくれへん?」
 あいよ。芥子粒みたいに小さなチャックを薄闇の中で慎重に探り当てて、そろりそろりと持ち上げた。高そうなシルクの洋服、チャックを噛ませて破きでもしたら大変だ。
 「……店、頑張ってるみたいやねぇ」
 アハッ料理長にでも聞いた?僕は元同僚のセリフに少しだけ居心地が悪くなって照れ半分、失敗したみたいな気持ち半分でそんな風に尋ねた。
 「火傷とささくれだらけの手ェで身体弄くられたら聞かんでも分かる」
 ふっと笑ったみたいに彼女がチャックの音を聞き終えて、髪を下ろした。
 あっ、まだホック留めてない。僕がそう思って肩に手を滑らせて髪に指を潜らせると、彼女がビクッと肌を震わせて僕から身体を離す。
 「いややわ、まだ足りへんの?小此木エッチ好きやなぁ」
 その言い方に少しムッとした僕は、逃げる髪の先をさっと掴んで引っ張った。彼女の黒髪がピンと張って、かくんと頭がこちらに倒れる。
 「ちょ、ちょっとぉ!」
 たたらを踏んだ彼女がベッドに舞い戻り、僕の胡座の上に身体を落とした。汗とシャンプーと厨房の匂い。彼女の匂い。
 「アハハー。誘ったのはそっちの癖にー。
 そういう事ゆーんならーお望み通り今日は寝かさないけどー」
 「アホかっうちは明日の朝一で帰らな開店に間に合わんのや!離せ!」
 アンタかて休み今日までやろ。はよ寝とかな厨房でボーっとしてたらキリコにぶちのめされるで!じたばた暴れて憎まれ口を叩く割に、僕の胡座の上から自発的に逃げようとしない彼女の顔を見ながら……なんだか……
 「……背中、なんか当たっとるんやけど」
 にぃ、と奥歯まで見えそうな程に口角を引き上げて彼女が笑う。
 「キリコさんがさー、ジャン居なくなってから人に当たるんだよねー。僕は別にいいんだけどさー、新入りとかにさえ刺々しいんだよねー。厨房の士気に関わるんだけど、なんかいいアイディアない?」
 僕はそれを逸らしてツラツラ言葉を並べ立てた。
 「それと背中のこれと、何の関係が」
 いや、楊とかキリコさんみたいな負けん気の強い女の人って多分こう言うのが好きなんだろうなーと思って。僕は言いながら彼女の右腕を足で挟み込み、左肩をガッチリ抱すくめてスカートを捲り上げようとする。
 「ちょ、ちょっと!なんやの!やめぇや!ほんまにアカンて」
 それに続く服着たばっかりやのに、という言葉は口の中で聞いた。甘いような酸っぱいような女の子の唾液。温度と湿度で蕩けそうになる。こういうメニュー作れないかな。
 「好きでしょ、無理矢理されるの」
 たらりと口から透明の糸が垂れている。彼女の唇に繋がったまま。
 「――――――あんたらみたいな引っ込み思案男は」
 どういうのが好きなん?尋ねる彼女の自由な筈の左腕には力が入っていない。全身に力を入れれば僕は放すつもりだった……ってのは、卑怯かな。
 「その引っ込み思案男っての、ジャンも入ってる?」
 「当たり前や」
 「なら、こうやって力任せに蹂躙するのが好きだと思うよ」
 僕は笑って物欲しげに尖った彼女の唇にもう一度噛み付いた。



 17:43 2008/06/06 47弾小此木×ヤン〜。大絶賛妄想中ですよ鉄鍋のジャン。小此木とヤンは絶対一足お先にアダルトな関係になってると思うよ!でもラブじゃないよね。小此木はジャンが好き過ぎ(notホモ)で今のところ他の人に興味が無いし、ヤンはサッパリしすぎて別にセフレでいーじゃんとか言いそう。でもお互いの身体に舌の這ってない場所は無いというディープなセフレ。そんな俺のダメ妄想。






ロジスティクス

 「カズくん」
 声をかけても彼は目を覚まさなかった。ずいぶん深く眠っている。
 こんな事は珍しい。寝坊、ぐーたら、のんびり屋の彼だけれど、それでも起こせばちゃんと目を覚ますし、反応もする。
 なのに今日はぴくりとも動かない。
 死んでない事は確かなんだけど。
 「ねぇカズくん、起きて」
 何度か揺すっても無反応で、規則正しい寝息と何かを抱え込んだまま沼に嵌ったみたいな難しい顔。眉間にしわを寄せて、険のある表情。
 きっと昨日の仕事は難しかったんだ。
 もしかしたら嫌な仕事だったのかもしれない。
 無抵抗の人を傷付けてしまうような仕事だったのかな。
 「……かわいそうに」
 夜遅くまで帰ってこないことはざらにある。幾日も帰ってこないことだって稀じゃない。君島さんもカズくんも、わたしには何も言わないけれど。
 なんとなく解るの。
 この家に近付いてくる足音で解るの。
 足を引きずるみたいに帰ってきた時は、あまり話し掛けないでほしい時。小走りで玄関に駆け込んできた時は、笑顔でお帰りって言ってほしい時。思案深そうに一歩一歩踏みしめる時は、何も知らん振りで接してほしい時。あっちこっちフラフラ千鳥足の時は、呆れ顔でうんと構ってほしい時。
 そして昨日は……抜き足差し足忍び足。これは顔を見られなくない時。
 「一人で寂しかったんだね」
 そっと毛布の上に覆い被さって、カズくんの背にもたれかかる。
 「……くらっ」
 「あ、起きた」
 「俺を勝手にかわいそキャラに設定すんな」
 男の部屋に入っちゃダメって何べん言やー理解すんだ。んー?と、カズくんが寝ぼけ眼を擦りながら私の頭を優しく小突く。
 「朝から夜這いたぁじゅぅぅぅごねんはぇぇぇンだよ」
 「ち、ちがうもん!あ、あさごはん出来たからっ!」
 「うそつけっこのスケベェめっ」
 「やぁーっ!」
 じたばた。じたばた。私は必死にポーズだけ逃げる真似。カズくんの逞しい腕に込められている力が弱々しくて切ない。髪に触れてる彼の頭の温度が温かくて悲しい。意地悪の素振りで私にしがみ付くあなたが辛い。
 「カズくん」
 「……んー?」
 「わたし、お料理とか、お裁縫とか、お掃除とか、牧場のお手伝いとか、頑張るからね。ちゃんと、がんばるね」
 「……ああ。かなみは偉ぇよ」
 「カズくんが全部嫌になっちゃっても、ちゃんと養ってあげるからね」
 「――――――そりゃどーも」
 だからどこも行かないでね。わたしはそれだけがちゃんと言えません。
 ……どうしてもどうしても、それだけは言えませんでした。
 「だからちゃんと……帰ってきてね」



 16:08 2008/06/12 48弾スクライド〜。兵站(へいたん) 作戦軍のために後方にあって車輛、軍事品の前送・補給・修理、後方連絡線の確保などに任ずる機関。カズ×かなはスッゲー難しいけどかな×カズは湯水のように湧いて来るぅ。カズマは物理的にも精神的にもかなみが居ないと戦えないといい。俺に。






浅き夢みし

 名前さえ呼べない。
 花と同じ名前。
 ……いつも俺はそうだ、こいつの前に居ると、特に二人だけで居ると、身体が動かなくなる。舌は痺れて引き攣るし、いつもの調子の軽口のつもりがヒドイ喧嘩になった事もある。足だの腕だのいろんな所にぶつけたり、ちょっと気を使ったことが裏目に出たり、もうとにかくすること成すこと全部が上手く行かない。
 それなのに俺はこの部屋に居る。
 のこのこやってくる。
 ……まったく、みっとも無くて情けなくて気分がクサクサしてくるぜ。
 「……ホラ、着たわよ」
 「――――――――――――」
 クローゼットのドアの陰から眉を思いっきり下げながら、淑乃が出てきた。白いレースをピラピラさせて、薄っぺらで透けてる布が胸の下のところから急に開いてて、下の、その、白い……なんだ、ぱ、ぱんつがだな……
 「せっかく着てやったのに何とか言ったらどう?」
 「……いい……」
 「それだけ?」
 「……すごくいい」
 「――――――ボキャブラリー貧困すぎ」
 「ま、待て、こっちくんな」
 「……なんでよ」
 「〜〜〜ッ……とにかく、くんな!」
 言い終える前に小さく丸めた自分の背に淑乃の足が落ちてきた。ドン。軽い足蹴に何かがふっつり途切れたような感覚が生まれてしまう。
 「前屈みになってんじゃないわよ」
 辛い。苦しい。切なくって胸が痞える。自分の言葉さえ自由にならない。
 どうして淑乃のいちいちの行動がこんなに俺を苛むのか。
 わかっている。
 わかっているような気がする。
 わかっていなくちゃならねぇんだ。
 少なくとも、俺は。
 「……ね、ちょっと……なによ?新手のギャグ?」
 「さわんな」
 「――――――ソレがたとえ歓喜の涙でも引くわ」
 「……俺にだってわからねぇ……でも、とまらねぇんだよ……」
 愛してる、なんて言えればいいんだろうか?いや違う。……違うということだけが解る。何故かなんてことは解らない。ただ、ただ……赤ら顔で拗ねる淑乃が自分の選んだ白に包まれて目の前にいる事実が猛烈に俺の中の何かを揺さぶってやまない。
 「………………。」
 微かに髪が引っ張られる。
 「恥かしいの?」
 一房、引っ張られる。
 「こんなカッコで独りぼっちなあたしより?」
 くいと頭が引っ張られる。
 「ねぇ、どうしたい?」
 淑乃の体重が背中に圧し掛かってきて、バカみたく沸々と漲る血と劣情に翻弄されている最中の俺はいっそこいつが憎くさえある。
 「淑乃」
 「なに」
 「結婚して」
 二呼吸も三呼吸も置いて、彼女が大笑いをした。心の底から愉快そうに、最高に間抜けなギャグを聞いたアメリカバラエティの観客席の歓声みたいに。
 俺はその笑い声を聞きながら、割と真剣にどうやって死のうか考えていた。



 10:59 2008/08/28 第49弾大淑のバカ話〜。楽しそうねお前ら。自分の中に生まれた新しい感情が良く理解できなくて振り回される滑稽。本人は大真面目なんだけどねぇ。大層遅れたあるみしゃんへ捧ぐベビードール話しょの@〜。






卑下と傲慢

 俺は男だ。
 どっからどー見ても男以外の何ものでもない。
 いくらこの金髪が見目麗しゅーても、色白で細い腰が色っぽくとも、ヒゲもありゃスネ毛も生えとるし、屁もクサい。煙草吸うから息も薔薇の香りってぇ訳にはイカン。
 そおゆう、どこにでも転がってるフツーの男だ。
 仕事してたときは一応客商売なので身なりには気をつけていたが、この船に乗ってからは基本、収入も暇も意味もないので、昔みたいに過剰に気にすることはない。
 それでも乗ってしばらくは、割と気を付けてたんだけどな。
 今みたいな事が無いように。
 ……ああちくしょう、いい匂いだなぁ。
 胸の上で潰れる柔らかく暖かなずっしりしたおっぱい。はちきれんばかりに伸びてしまったシャツの絵柄が笑える。自分のじゃない心臓の音がくすぐったくて照れくさい。
 紅く染まった日に焼けた肌が、照り焼きのよーにキラキラ光って見える。汗をかいているのか、触れている所がじっとりとぬかるみ、熱い。そして何より、彼女の体重。クラクラする。目で見て、眺めて、想像していたよりもそれは確かなもので、なんだかそのリアルに感動した。
 俺は身体を何とか動かしたかったけれど、動かすとこの幸福が、幸運が、消えて無くなってしまうような気がして固まったまま。何よりもそれだけでもう胸が一杯で身動ぎするなんて事すら思いつかない。ただただうっとりと夢うつつ。
 声も上げられない。
 息も億劫だ。
 瞳を動かすのさえ罪のような気がしてくる。
 素敵な苦悶だ。
 あのオレンジ色に輝く宝石みたいな瞳で見つめられていると考えるだけで、自分の何もかもが矮小で貧相でトンチキに思えて劣等感で全身が凍りつく。彼女がおれの事を考えていると思うと不安と期待で身が爆ぜてしまいそう!
 「さんじくん」
 声は出ません。
 「ねぇ、って、ば」
 ぎょろぎょろ目玉だけが動く場所。
 「部屋に、連れてって」
 蕩けた声に毒の匂い。
 素敵な
 素敵な
 殺意の予感
 「チップに期待しちゃう」
 予防線を張り巡らせる俺はまるで男じゃないし、紳士じゃないし、その辺に居るクソガキですらない。
 ただの臆病者だ。
 ほらもう心臓の喧騒が鳴り止んだ。恋も寂しさも、もう手を伸ばせない。
 臭くて身形に構わない鈍感のトンチキに成り下がりたかった。ゾロやルフィみたいに、人からどう思われようが気にしやしない唐変朴の猿真似までしたのに、いざとなったら彼女の瞼のその奥を覗き込んで無駄な詮索。
 諦めの悪いクソッタレだぜ。
 「受け取る度胸もないくせに」
 彼女が笑う。俺の精一杯の抵抗を嘲う。哀れ哀れとケラケラ嗤う。
 目に涙を浮かべながら。
 「受け取らない勇気と言って欲しいな」
 ……愛してくれとは言わないからさ、思わせ振りはやめてくれ。



 16:54 2008/09/08 祝大台突破!50弾はワンピース。うちのサンジとナミは結局船に乗ってる限りは永遠にこうしている様な気がする。お互いこれじゃだめだと思っている。かといってどうすればいいのかなんて解らない。閉じた輪の中でぐるぐるぐるぐる永遠を演じている。
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