君にヤキモチ

 今まで自分がどうやって生きてきたのか思い出せない。
 心に彼女が居なかった頃、一体どうしてやっていたのか。
 忘れなくては、忘れなくてはと思うのに
 浮かぶのは彼女のことばかりで
 ワガママで手を焼いた苦労よりも
 きらめく笑顔と楽しそうなはしゃぎ声
 そして心の通じたたった一瞬の幸福ばかりで
 ひどく落ち込むのだ。
 忘れなくては
 忘れなくては

 「久しぶりだな光子郎」
 声をかけられてハッと顔を上げると、くすんだ色の金髪の男が居た。
 「お、おはようございます」
 何だよ他人行儀な挨拶だな。男は僕の態度を鼻で笑いながらも嫌味な感じは全く見せない。
 「ヤマトさんもこの電車なんですか?」
 「いや、ちょっと出かけるからさ」
 視線を蛍光灯附近に持ち上げながら濁った声がする。
 彼の身形はいつも小奇麗で整ってはいるが、今日は心なしか色気があるような気がする。半年も合ってなくたって分かる程度に。
 「朝からデートですか?」
 「……相変わらず嫌味なヤツだな!」
 照れたような歯軋りをしながら、彼は僕の頭を小突く。
 『そうだよ』
 小さな声で彼がそう囁いた。聞けば互いの大学生活が忙しすぎて時間が取れずじまいのお陰で3週間も前から今か今かと待ち遠しかったデートなのだそうだ。
 「大学生って大変なんですねぇ」
 「そう言う光子郎だって受験生だろ、こんな遅い電車に乗ってて大丈夫なのかよ」
 つり革を持つ仕草も絵になる長身を折り曲げ、彼が尋ねた。
 「今日は課外授業なんです。自主的な」
 笑って返事をすると、ぎょっと吃驚した彼はなんとも言えない渋い顔をして何故、と言葉を搾り出した。
 「受験勉強ばっかりしてると息が詰まりますから。今日は一日息抜きです」
 「……なんか……お前、変わったなぁ」
 「ヤマトさんも随分話し易くなりましたよ」
 「…………皮肉屋め。」
 眉をひそめながらも、彼が笑った。
 「そういやミミちゃんは元気か?」
 何の気もなく、天気と同じようなレベルでその話題を出したのだろう。今日は暑いですね、と同じようなニュアンスで。
 「さぁ、元気なんじゃないですかね。」
 彼がもう一度ギョッとする。僕は電車が止まりそうな事を知ったうえでそう返事をした。
 「………………」
 絶句する彼をそのままに、開いたドアの外に身を躍らせる。生ぬるい湿気を含んだ世界に足を踏み出すと、履いていたジーパンがずっしり重く感じられて全くうんざりだ。
 「空さんによろしく!」
 ドアが閉まる寸前に、彼がなんともいえない表情でうんと頷いたのを見終えてから、僕は駅の待合室のドアを開けて冷えたベンチに座る。古いクーラーが唸る音が狭い待合室に響いている。
 「……知らないんですよ」
 頭の中で呟いたのか、実際声に出していたのかさえもう分からない。
 どのくらいそうしていたのか気にも留めていなかったが、はっと気付くと僕の他にも随分人が待合室に立っていた。
 「――――――こんな事でどうするんだ」
 頭の中で呟いたのか、実際声に出していたのかは分からない。それでも次の電車はやって来て僕をどこかへ連れてゆく。一体何処へ。
 「光子郎」
 声に振り向くと、息を切らしたヤマトさんが立っていて、今にも僕の腕を掴みそうな格好をしていた。
 「えっ……ちょっ、ど、どうしたんですか」
 「うるせぇ」
 停車して開いたドアに連れ込まれ、そのままあの頃のムッツリとした顔のまま腕を組み目を閉じている。
 「空に連絡取った。今日は俺らに付き合え」
 「ええええええ!?な、なんでですか!」
 「黙って言うこときけ」
 「久しぶりのデート邪魔出来るほど野暮じゃないですよ!」
 「じゃあお前一体何処へ行くんだよ」
 「……と、図書館です。あと電気街とか」
 「所在無さげなツラぶら下げて俺の前に出た事を恨むんだな」
 「そんな無茶な!」



 31弾デジアドシリーズ。……ウワァ続いた!?書いてる自分が一番驚いてどうする。長いんだったら闇鍋に書くなや。だって長いとなかなかうPしないし。とりあえず3話くらいで何とかなる予定。京ちゃんも出ます。多分。14:01 2007/08/31






5時に起こして

 夜のガラス窓、短く瞬く夜景、背の高いビル、それから
 ひどく疲れている。体中が悲鳴を上げているのに頭の中が上手に終了してくれなくて眠れない。しょぼしょぼの目を擦るだけの力もなく、俺は小さな蛍光灯の明かりにぼんやり映っている自分の姿を見ている。派手な色の制服、ジャケットはこれでもちゃんと暖かい。冷房の効いた部屋の片隅で、そんな取り留めもないことを思った。
 左肩に花の香り。シャンプーと体温の匂い。緩慢な鼓動と静かで微かな寝息。それに心躍らせる余裕は、ない。
 綺麗な髪だとは特に思わん。
 家族は長髪の女ばかりだし、自分自身髪が長いもんで、自慢じゃないが髪の手入れにはなかなかうるさい。短髪なら短髪の手入れというものがあるし、それが俺の合格ライン以上に成されているようには見えないからな。
 別にケチをつけているわけじゃないぞ。
 ただ、ああそうかと思うだけだ。
 でもその短くて手入れの足りないその髪を、少し、触ってみたい様な気もする。……当然目を擦るのも億劫なのでしないけど。
 潤いの足りてない目を無理に動かして左肩の先を見た。ゆっくり上下する制服のジャケットの胸元。特別何とも感じない。
 ただ、ああそうかと思うだけだ。
 頭に顎を載せて目を閉じた。瞼が一度軋んだような感覚があって、もうずいぶん細くなっていた映像が途切れる。
 花の香りと体温、それから自分の鼓動と、もうひとつ。
 確か眠る前に言われた、疲れたら横になって眠ってもよいと。自分が起きているから、体力を回復させろと。……多分言われたと思う。いや、絶対そう言ったはず。俺は覚えてる。
 重い瞼をもう一度だけ持ち上げた。霞む夜景の少し手前に闇色に染まったガラス窓。蛍光灯の弱々しく寒々しい反射。
 そこに
 そこに
 そこに
 俺の夢が映っている。
 まるっきり幻のようで、さりとて遅い瞬きをしても途切れない夢。
 俺に身体を預けて安堵して眠るその様は俺の理想とはかけ離れているけど、やっぱりそれは夢だった。……変な話だなと、自分でも思う。俺は頼られ慣れているし、それを苦痛には思わない。
 だけどヘンだな。今のコレは違うような気がする。
 なのに嬉しいんだ。いや違う、悲しい。だが満足している。その代わりにひどく疲れている。
 だめだ、頭が死んでいる。
 起きているお前はちっとも解らない。
 寝ているお前は輪をかけて解らない。
 いやそもそも俺はなにを解りたいのか、なにを知らないのか。
 ……頭が痛いような気がする。
 ――――嘘だ。
 本当はたまらなく不安で叫び出したい。許されるなら声を殺して泣くだけでいい。そして俺を、慰めてくれよ。背を摩りながらお前のその声で、俺の名を呼んでくれ。それでいい。それがいい。
 そうすればきっと、たぶん、おそらく
 「何も変わんねえよ」
 自分で自分をハッとさせるなんて、よほど疲れてんのかな?
 眠たい。眠りたい。煩わしい無駄な事は忘れて、目を閉じたい。無邪気に何も考えず、自然に眠りたい。
 なのにここでは手足を伸ばして眠れないような気がする。
 この盈虚のように時々、そして必ず顔を出す謎が解ける日は来るのだろうか?そしてその謎が解けた後はどうなるのだろうか?大体この謎が解けたって事は、俺ここにいねぇんじゃねえの。
 もしくは、俺の隣にお前が居ない。

 予知のように思った。



 32弾デジセイバ。制服着てる前半の頃の話。多分深夜徘徊するデジモンとか待ち伏せてるミッション。「淑乃がクールポジションをずっと崩さなかったらきっとアニキは一切手出しできない。臆病とかじゃなくて、もっと残酷チックな理由で」という妄想。ED1のカップリング曲『小さな宵月』が好きでねぇ。あの透き通ったぼんやり感がアニキの本音だったら面白いなーって思った。ウチのどの話ともリンクしてないけど、多分オチは一緒。そんな話。23:42 2007/09/18






昇降機

 「アグモンはどう思う?」
 彼女が訊いたので、アグモンは少し思案していくつかの馬鹿なセリフと馬鹿な仕草を思いつきはしたけれど、それを採用するのをやめた。
 「なにが」
 それでも一応自ら口火を切る無駄な度胸を発揮するのは留める。万が一にも、自爆するのだけは避けたい。それは自分は部外者なのだという認識の表れであったし、彼女に対する“俺は決して踏み込まない”という意思のアピールでもあった。
 「あの馬鹿があたしの事どう思ってるか」
 馬鹿というのは相対的な侮蔑であるからして、ある範囲内から無作為に選ばれた中での一点ではありえない。作為的指示語だ。故に“あの馬鹿”というのは恐らく“あの馬鹿”なのだろう。少なくともあれより馬鹿は知り合いに居ない。
 「さあ。淑乃が思ってる通りなんじゃないの。
 誕生日に小遣いでエロ下着贈るよーなバカだけど、それは単なる経験不足と頓珍漢でさ、悪気は無いよ。よしんば悪気があったとしても、淑乃をせせら笑おうとか陥れようとか、そういう種類の悪気じゃない」
 「そんなのわかってるわよ!」
 苛立つ憤怒を何とか押し留めようとしてか、淑乃が親指のつめを噛む。その仕草をいつだかララモンに指摘した時、ララモンは顔をしかめて何も言わなかった。
 今ならあの時のララモンの気持ちがわかるような気がする。つまり、この人は不器用なのだ。素直でない上に、感情を表現するのがとても下手で、しかも一度出した感情を自力では収められない。
 『なんか、アニキより重症ってカンジ?』
 「じゃあ何をそんなに怒ってるんだ?
 気に食わないなら振っちゃえよ。あんたなんか嫌いよってさ。一発で片付くぜ」
 ここでいつもの俺ならどうしてただろう、と真顔のアグモンがエレベーターの次々に光る階層を示す液晶画面を見ていた。恐らく笑いながら言ったかな、と結論づいた。
 アグモンは淑乃と大を取り合いしたい訳ではなかったし、その間に割り込んでやろうという魂胆もなかった。もちろん少し前のララモンのように邪魔してやろうとも思わない。
 『俺はどうしたいのかな?』
 「願わくばキツイ言葉で言わないで適当にあしらってやってくれないかな。
 そしてもし許せるのなら、我慢して黙ってて欲しい。もちろんそれを決めるのは淑乃だけど」
 「……勝手な言い草ね」
 「部外者だもん」
 「相談とか、受けないの」
 腕組みに、背中は壁に預け、片足をクロスさせて不遜な態度。淑乃の戸惑いが透けて見えるようだとアグモンは思ったが、当然言わない。
 「淑乃のハナシなんか、俺にするわけないじゃん。……てか、アニキが他人に相談とかありえない。仲良くなる為にはどうすればいいかって悩んだ結果がエロ下着だろ。あれが俺の入れ知恵だったら、俺ソーセージヌンチャクでぶっとばされっぞ?」
 溜息と焦り、すこし安堵。淑乃がアグモンから視線を外して、また押し黙った。
 「寝るのやめたら。ちっとも楽しそうじゃない。
 楽しくなる前に辛そう。不安と疲れで、なんか一緒に居ると緊張が伝染するみたいだ。
 でももし淑乃がそれでも続けたからって俺達は責めたりしないよ。そういう形の愛とかもあるんじゃないの。安らかで楽しいばかりが恋愛って訳でもないんでしょ」
 でも俺達はデジモンだからね、出来ればそんなに苦しいばっかのパートナーを見てたくない。だけどさ、お互いそれに何か俺達には解らない重要な意味があるなら、仕方ないよね。
 そこまで言って、アグモンはしまった喋りすぎた、と苦虫を噛み潰したような表情をしたけれど、もちろん背にいる淑乃には解らない。
 「つまりそれって、仲良しの友達を取られて嫉妬するって感情に似てるわね」
 そしてアグモンの表情の変化を知らぬまま、淑乃が嘲笑にも似た口調で吐き捨てる。彼女の良くない癖だ、理解できないものに虚勢を張るのは。
 「そうそ、おまけに俺たちってこの世界じゃ所詮擬似生命体じゃん?いつ愛想尽かされるのかっていつも気が気じゃないんだ。ララモンはずっと淑乃の味方だし、俺はずっとアニキの味方だ。……例えパートナーと離れ離れになってもずっとそうだから、捨てられたらちょっと辛いの、わかるだろ?」
 淑乃が嫉妬と表現したこの感情を、アグモンはもう少し切実なものだと切り返しながらも、適確にラベリング出来ずに居た。
 『俺はどうしたいのかな?』
 「そう。“あたしと大”の味方は誰も居ないの」
 「居ないね。だから止めてくれるわけ?俺にアニキを返してくれるんだ?それは万々歳、目出度くも有り難い朗報。ララモンもきっと手放しで喜ぶよ。みんなニコニコ、大安心。
 リスクは夢見がちで世間知らずの馬鹿な中学生の失恋だけ。
 鬱陶しくべたべたくっつかれる事もなくなるし、公共の場で大声上げて怒鳴り散らさなくても済む、朝早くに出勤する日だってベッドで両手広げてぐっすり眠れるね。こんなにいい事は他にない」
 アグモンは一気に言ってしまってから、ゆっくり淑乃を振り向いた。
 「でもそんなこと出来るくらいならこんな事態にはなってないんだろ。
 最初は人恋しさでも、もう今はそれだけじゃないんだろ。
 だったら最後まで逃げたりするなよ。終わりまで見極めろよ。途中でリタイアなんてみっともないパートナーは誰だって持ちたかない。
 俺にアニキの気持ちを聞いてどうする?本人に尋ねるのが筋ってもんだろう?
 味方が要るのか?違うだろ、味方ってのはなってやるもんだ、欲しがるもんじゃない」
 「あんた意外におしゃべりなのね」
 「わかる奴にはね。解らない奴にはしゃべらない。無駄だから。あと、解ってる奴にも喋らない。」
 「無駄だから?」
 「そうだ」
 アグモンの苦虫を噛み潰したような表情を目の当たりにしながらも、淑乃は特に何も言わない。アグモンはそれがまた一つ淑乃の枷になったのかと思うと、それ以上何を言う気にもなれなかった。
 『俺はどうしたいのかな?』
 応援や叱咤激励に似せた醜い罵りを鑑み、アグモンは自分がララモンに説教する資格なんて何処にもないと、急速に降りてゆくエレベーターの箱の中でうな垂れるしかなかった。



 33弾デジセイバ。愛だろ、愛。だからこういう救いようのない泥沼な話ばっか書くなっつうの。アグモンは淑乃の葛藤の中身を薄々気付いている。同じ葛藤を持つもの同士仲良く出来れば世界は平和になるのにね。アグさんもヨッシーもただアニキが好きなだけ。アグさんは素直が世界を変えるわけじゃないと知っているし、ヨッシーも捻くれじゃ自分を変えられないことを知っている。ああだけど、だけど今までの自分を否定するなんて恐ろしいこと一人じゃ出来やしない!望むらくは力強く動じない、自分が優位に立てる場所を持つ可愛いあの人をこの手に!……悲惨です。世界は悲惨です。いつだってそうです。合掌。2007/10/19〜10/25






地球回りの午後

 画面がちかちか瞬いている。ときどき唸り声が上がったりして、うねりくねっている画像は女の人の潰れた顔。薄鈍色や唐紅や暗緑色、京紫にサックスブルー、焦香と目の覚めるよなスカーレット。とりどりの中間色が交じり合い、潰れながら生まれている自分の探偵事務所サイト。
 「やだな。こんなのに慣れていくみたい。
 もっと明るくて楽しい色が好きなのに。例えば桃色とかさ、サーモンピンクとか小豆色とか柿色とか抹茶色とか栗色・くるみ色・コーヒー色、ココアに橙にチョコレートに小麦に人参に……」
 「蛆虫、原材料を丸のまま食うのはよせ」
 「……色の話よ」
 背中から声がしたので、ウィンドウを閉じた。黒い背景に、くっきりとスーツ姿の化け物が映っている。鳥のような、爬虫類のような、仮装のような、そのどれもに真を秘めるフリークス。
 「珍しく一直線でここへ来たな。いつもならどこらかしらで買い食いしながら出来るだけのろのろと歩くというのに、まだ4時前ではないか」
 黒の背景で、化け物が視線を上げて時計を見たのだろう。その仕草はまるっきり人間のそれで、だからこそ錯覚を起こしやすいに違いない。……ただの思い込みだ、幻覚なんだ。
 「お小遣いがね、心許ないから」
 ゆっくり目を閉じて、深呼吸をしてから椅子を回し、ゆっくり瞼を開く。
 「依頼料まで食い尽くしたのか、賎しいブタめ」
 そこには金髪の背の高い底意地の悪そうな青年が立っている。口は耳まで切れ込んでいて、目尻はぎりりと吊り上がり、その冷たいエメラルドの眼光は奈落の底のような色をしていた。
 「……依頼料で物を食べる気しなくて」
 心底楽しそうに笑う化け物を見ながら、やだな、こんなのに慣れてくみたい、と思った。
 「今にたまらなくなる。我慢など出来なくなる。それまで精々甘く切ない良識にナメクジの如く縋るがいい。我輩は貴様のちんけな無様を座布団代わりとして、後悔を肴に嗚咽を啜るとしよう」
 高らかに笑う。笑う。笑う。楽しそうに、嬉しそうに、朗らかに。
 エメラルドの瞳はいつもすべて見透かすようにギラギラ輝いているのに、最近この瞳が怖くない。時々興味さえある。どんなにひどい言葉を投げ掛けられようと、少しも恐ろしくない。
 ……まずいな……
 「ネウロ、時計の針ってなにまわりか知ってる?」
 「右回りだろう」
 「外れ。時計の針の起源は日時計。従って地球回り」
 「……フン、下らん言葉遊びだな」
 言いながら禍々しいものがぐしゃぐしゃと乱暴に私の髪をかき回した。とげとげの手が肌に当たって痛い。思い切り力を込められて痛いのに、どこか笑っているように見える魔人を目の前にすると心が落ち着いてゆくのがわかるんだ。
 ……まずいわ。



 34弾、魔人探偵脳噛ネウロ。いつかはと思っていたがここに来て弥子ネウかよ俺。ネウロは難しいね。てゆうかデレるネウロとかネウロじゃないのでボキにはネウロは書けません。キライだけど褒められると嬉しいの。好きじゃないけど相手にされたいみたいなの。弥子よがんばれ夜空に鈍く輝くMの星となれ。13:21 2007/11/01






タイトルはつけられません

 空自体が明るいのよね。うちのあった西の都から離れて中心部方面を眺めるとやはり空の色が違う。
 「世界って広いわ」
 「母さんらしからぬコメントだね」
 「そう?」
 人々の手でゆっくり復興してゆく世界に残った傷跡を、たった二人残った親子で修理している。夢みたいな昔、昔、そのまた昔、まだ世界がきれいで健やかで元気だったあの頃の風景を、一日も早くこの子に見せてやりたい。
 「綺麗だったんだから。山々は吸い込まれるみたいに青々茂ってて、街には一杯人が居たわ。みんな薄着で外を歩いてられたし、夜は月が輝いてた。
 ……そういやトランクスは月なんて見たことなかったわね。昔は地球に衛星があったのよ。孫くんが変身しちゃうから亀のじいさんがぶっとばしちゃったんだけど」
 小型ハリアーの窓の外を流れる星屑に思いを馳せながら、そんなに昔の事だったっけ、と思った。いやいや、トランクスがもう17なんだからずいぶん昔か。
 「父さんも、いたの?」
 操縦桿を握りながら真っ直ぐ前を向くトランクスがそんなことを言った。
 「何が?」
 「そんな穏やかな世界に、父さんも居たの?」
 スタビライザーの計器を気にしながら、ゆっくりと旋回を始める機体が少しずつ斜めを向き始めた。
 「あんたのお父さん好きにも参るわね。だから何度も言ってるでしょ、大していい人じゃなかったんだって。この地球を攻めてきた宇宙人だったのよ!何度殺されそうになったんだか!」
 「悟飯さんがね」
 はしゃぐように声を荒げた私を嗜めるかのような調子でトランクスが静かな声を出す。
 「あん?」
 「何度も話してくれたんだ。僕のお父さんの話。強くて気位が高くて……孤独な人だったって」
 ガラスを挟んで風景を眺め、それより遠くにある星々に視線をやりつつももっと漠然としたところを見ているような世間知らずの息子が、悟ったみたいにそんな風に切り出すのが少し可笑しい。
 ……あの頃の悟飯くん子供だったし、悟飯くんにくっついてたこいつもチビだったし、見事な刷り込みの連鎖……こうやって伝説は伝説になっていくんだわ。……しかし、強いってのはいいけど気位が高いって褒め言葉じゃないわよ悟飯くん。……言いたくなる気持ち解るけど。
 「――――――でも、会ったんでしょ。あっちの世界で、生きてる『お父さん』に」
 「ええ。」
 「どう?感想は。理想とはかけ離れてたんじゃない?チビで目つきと性格最悪だった?」
 「想像とは少しだけ違ったけど……。性格は、ちょっと母さんに似てるかな。
 母さんの話も少しだけしたんだ。何も話してくれなかったけどね」
 忍び笑いをするトランクスの横顔から目をそらして、それとなく星の大海を仰いだ。人造人間の脅威がなくっただけの傷だらけの世界。夢から覚めない息子の気持ちも解るけれど。
 自分ひとり目を覚ましてしまったみたいに、あの頃の欠片さえこの世界には残っていない。写真も景色も面影さえ消えてしまったこの世界で、だけど私は生きている。
 「父さんのこと愛してた?」
 「……さぁ、どうだったかしら。昔の事だからね、忘れちゃった」
 ぞんざいな返事一つ返して、星に酔う前に瞼を閉じた。
 「――――――そう」
 息子の沈んだ声を道連れに、私は静かに夢の世界に埋没してゆく。
 色のない夢の中で、過去に行くトランクスに託す言伝の一つも無かった訳を思い出した。
 あれが何だったかなんてもう覚えてないし、それを確かめる術はもう無いし、夢の世界のあんたは別に必要じゃなかったのよね。
 私一人夢からはぐれたっていいの。
 夢の忘れ形見はハンサムで素直ないい子だからちゃんと満足してるわ。



 35弾、未来ブルマの話。未来ブルマ(分岐ブルマ)は王子のこと愛してたのかなとか思ったので。チチは悟空さを多分誰よりも愛してるからこそ時に憎むけど、未来ブルマはベジータを愛してるかどうか認識する前に死んじゃったから憎悪もしないんじゃないかなー。行きずりの男の一人。夢から覚めた女が一人で荒廃した世界に産み落とした男の子は、王子の生まれ変わりとかだったらいいなぁ。シビアな世界でブルマは今日も元気です。だってブルマだから。16:47 2007/11/01
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