倒錯と寛容
ラム×あたる
俺は意を決して仕方なくしゃがもうとする。するとラムがそれを見越したかのようにパジャマのズボンをするりと下ろした。
「……ひぇっ」
「ほらぁ……ちゃんとうちにダーリンのここがどうなってるか見せるっちゃ」
「ううううそだろぉ!?」
「あん、見なきゃちゃんと取れないっちゃ」
「うそだやだもうやめろこらいやだぁ!」
「そんな大きな声出したらお母様に聞こえるっちゃ」
その言葉に涙と声をぐっとこらえて俺はラムの目の前でしゃがみこんだ。大きく足を開けて、下着も穿いていないままで!
「こんなにして……とろとろだっちゃ……ダーリンこんなままでお母様と喋ってたっちゃ?」
ラムの指がくるくると敏感な部分を旋回する。たったのそれだけで意識が飛んでいきそうだった。唇から意もせぬ声が漏れる。
「ああぁ…いやぁ……!」
「いや?どうして?ダーリンのここは真っ赤でとろとろでうちの指を離してくれないっちゃよ?」
足が、腰が、がくがくと痙攣する。しゃがんでられない!腰が抜けそう!
それでもラムの指は執拗に周りを旋回するばかりで進入してこない。俺は最後の理性を振り絞って抗議した。
「いい加減に早く取れ!言われたとおりしゃがんだだろーが!」
それを聞いたラムがにやり、と笑った。あの時と同じ顔で。
「柔らかくしないと、出てこないっちゃ。うちにされるのが嫌だったら、ダーリン自分で柔らかくするっちゃ」
あの階段の踊り場で見た顔。あの顔でそう言った。耳より先に頭を疑うようなことを。
「ほら、こうやって指で、自分でするっちゃ」
呆然とする俺の手をさっき自分が触っていた場所に誘導して、囁く。
中指を立てられ、じゅぶと音がするまで突っ込まれた。
「い、ひぃー!?」
「ほら、中指で、柔らかくするっちゃ」
自分の指の感覚が脳味噌にフィードバックしてくる。快感と感触、それと…羞恥。みんな綯い交ぜになって体中を暴走して目がちかちかするのに指が、指が止まらない!
ちゅくしゅくちゅぷ…
音が聞こえてる。自分で触っている音が聞こえてる!
「も、もう…ゆ…許し……っ」
「何を許すっちゃ?ダーリンが一人でしてイっちゃうこと?」
イく。どこへ。どこかへ。呆然と脳がそんな言葉を反芻していると、ラムがついに俺の指を掻き分けて自分の指を挿入した。
「いぃいいひいー!」
ぬかるみにあの自分の指とラムの指が二本埋没しているのを想像して、雷鳴にも似たショックと共に視界が歪んだ。
★☆★☆★☆★☆
「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「ダーリンったら指だけでイっちゃうなんて淫乱だっちゃねぇ」
くふふふっと含み笑いを漏らしながらラムが指で銀色の小さな卵形の、ぬるぬると粘つく俺の枷を弄っている。俺の体内にあった、悪魔の枷。
俺はやっと身体が軽くなったような気がして、ほっとしていた。そのココロの緩みがついに涙腺を開放してしまったらしい。
「うっ…うううううー……っ!」
こんなのアリか。こんな、こんな…ラムに身体を弄ばれて…俺は誓ってラムにこんな仕打ちをした覚えはないし、こんなことを望んだ覚えも無い。なのに何故俺はこんな目にあって、こんなに悔しくて悲しくて……もう何がなんやらわからない。わからなくて涙が出てくる。
「ダーリン……恥ずかしいっちゃ?」
「違わい!情けなくてたまらんのじゃ!」
「……情けないって……」
「女にイかされて!弄ばれて!なんでお前は俺に格好つけさしてくんないんだよ!俺はお前の前でこーゆうの!やなんだよ!」
なんでなんで格好悪いとこばっかりお前の前で。自分が不甲斐なくて悔しくてたまらない。
「……ダーリンがうちの前で泣いてくれたっちゃ」
ラムがそんなことを言って泣いた。
俺は弾かれたようにラムの顔を見た。泣き笑いで変な顔だった。
「うち、強気なダーリンも弱気なダーリンも、みんなみんな欲しかったっちゃ、全部全部欲しかったっちゃぁー……」
ぞわぞわと背筋がそそけたって、思わずラムを抱きしめた。衝動的で咄嗟の行動。でも不思議と違和感が無い。
「ばかやろう」
「ごめんなさいごめんなさい」
「ばかやろう」
「ごめ……ごめんなさいぃ……」
「ばかやろう」
最初のばかやろうはラムに。次のばかやろうは自分に。最後のばかやろうは神様とかいうやつに。
「うちダーリンが大好きなのぉ…!」
「…ここまでせにゃ言えんかお前は…」
……ここまでさせにゃ解らんか俺は。
意地張る。それを見抜く。怒る。許す。入れ替わり立ち代り、追っかけて逃げて近寄って離れて。それさえも頼りなくなったら、どうやって伝えたらいいんだろう。この不確かな何かを、どうやって。
……ラムは一直線でばかだから、頑固で意地が悪くて…ちくしょう。
じりじりと頭の後ろで空気が膨張する。何から言えばいいのか、言葉だけがどんどん作られては死んでいく。
深く深く深呼吸をして、息を止めてキスをした。
★☆★☆★☆★☆
「俺の本音がそんなに聞きたいか。」
「…ううん、もういいっちゃ」
「……そか」
「そのかわりうちにやらせて」
「………………な、なにを」
「せ・っ・く・す」
「まぁだ凝りんのかお前は!」
「一回だけ!一回だけうちがダーリンに挿れてみたいの!」
「〜〜〜〜〜っ〜」
「ね、一回だけ。一回だけでいいちゃ、一生のお願いだっちゃダーリン!」
「い…いやだぁ……つってもどうせするんだろうが」
「優しくするっちゃ。ね?ね?いいっちゃ?」
ゆっくり体重を掛けられ押し倒されて俺はもう覚悟を決めるしかなかった。暴れて怪我でもしたらつまらんし、騒いで母さんに心配かけるのも面倒だ。それに……実はちょっと――――興味が無いでもない。
「痛くしたら即座にお前は丸コゲだぞいいな」
「いいっちゃ」
本当は電撃なんか出せもしないのにそれが精一杯の強情だとラムも気づいているのだろう。あっさりと返事をする。
指が身体を滑る。元俺の指が、元ラムの身体を、丁寧に丁寧に滑る。
「こんなに肌が張ってるなんて……ダーリン力入れ過ぎだっちゃ、もっとリラックスしないと痛いっちゃよ…」
無理をゆうなよ、これから本来ありえない体験を強要されるんだぞ、緊張してない方がどうかしてる!……当然そんな軽口を叩く余裕など無い。
自分の口から出そうになる『きもちいいこえ』を必死に押し込めて強く目を閉じながら来るべき衝撃に耐えようと下腹に力を込める。
「……んもう」
ラムの指が敏感な場所を何度もこすって、何とか俺に声を出させようとする。
俺は絶対に死んだって声など出すものかと口を両手で押さえる。
「いいっちゃ、ダーリンが痛くないようにって優しくしてるのにそっちがその気ならうちも遠慮しないっちゃ」
ふっと身体が軽くなったかと思うと、急に抱きかかえられてラムが下に、俺がラムの腹の上にまたがる格好にされた。
「お、お、お、お前……これは……」
「ダーリンが自分で入れるっちゃ。これならダーリンがいくら力を入れたってちゃんと入るっちゃ。」
元自分の身体が一望できる。表情、体つき、それから……
「男初心者のくせにお前コレはちょっと充填しすぎだろ」
いつの間にやら装着された買い置きコンドーム。ラムの髪の色と同じ緑の。
「ばっばかっ!くだらないとこ見てないで早く入れるっちゃ」
女初心者にいきなり騎乗位させたあげくクダラナイトコだと?ムカっと来たが怒り出すのも人間が小さいかなとおもって飲み込んだ。自分で自分の抜き身を下らなくないと言い張れるほど俺の根性は座ってない。
「い、いくぞ…」
「は…はい。」
俺は呼吸を整えるようにして、よく知っているそれに腰をゆっくりと下ろした。
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「あっあれ?」
何度か試しても入らない。どう腰を下ろしてもそれてしまうのだ。
「なんで?」
「…ダーリン、たぶん、ダーリンがちゃんと自分で支えないと入らないと思うんだけど……」
……支えるって………………………………おい。
「そのくらいお前がやれよ!」
「うちが自分で支えたらダーリンが痛いに決まってるっちゃ!」
「こーゆーのは共同作業だろが!この上お前俺に自分で支えて腰を下ろせと言うのか!?」
「だってうちはいっつもそうしてるっちゃ!」
ぐっ……言葉に詰まる。伝家宝刀の一言。
「ね、ダーリン自分がされたら嫌でしょ?こーゆーことをダーリンはずーっとうちにやらせてるんだっちゃ。うち恥ずかしくてもちゃーんとしてるでしょ?えらいでしょ?」
ふふん、と鼻を鳴らしてラムが勝ち誇った顔をする。
「俺は外に行ってまでやったことなど無い!」
「一日で積年の恨みを晴らそうと思ったらあれくらいになるっちゃ」
四面楚歌とはこういうときに使うんだろうか、と漢詩の授業で習った四文字熟語がふっと頭によぎった。
「……おっ……俺が支えて入れたらお前が納得するのか」
「さすが飲み込みが早いっちゃ」
もう逃げられない。覚悟を決めるしかない。ええいままよ。
支え、あてがい、腰を落とす。
「ひぇえええぇっ!?」
「うぅくぅ…ん」
「ひ、ひ、ひたぃ!ひたっひたひぃぃ……」
「やだっダーリンそんなにキツくしたら…!!」
身体が左右に引き裂かれるかと思った。その一点に信じられないほどの重圧というか衝撃というか、とにかく今まで生きてきて知らなかった痛みとも快感ともつかぬショックが圧し掛かっている。
「いた、いた、いたい!痛いぞこらぁ」
「動いちゃだめ!動いたらぁ……だめぇ!」
じわじわと涙が湧き出てきて思いもかけず幾筋も流れた。なんとゆー痛み、なんという違和感。こんなのを毎回、受けてんのかラムは……
「嘘つき!痛ぇじゃねぇか!」
「あー、あーっ……動いちゃだめぇ、ダメェ…っ」
眉間にしわを寄せて、まるで俺が惚れそうなくらいに切ない顔のラムが小さな声で動いちゃダメ、と繰り返す。
「動くなっつったって、痛くて」
「今動いたらいっちゃう、うち、いっちゃう…」
「なんでだよ!?なんでこんなのでいけるんだ!?」
「ああっ…………ダ……っリン……ごめ………………っ」
かすれた声で呟くと、俺の下でラムが小さく痙攣してぐったりと力尽きた。
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「お前ね、早すぎ」
「……ダーリンのばかぁ…うち動いちゃダメって言ったのにぃ…」
ラムがくたっとしたままなのをいいことに、ようやく体を突き通していたものから逃れて腰が軽くなった。
「あと痛過ぎ。下手くそ」
「なっ!なにゆーっちゃ!痛いのは当たり前だっちゃ、角度も考えないで動き回ったら痛いに決まってるっちゃ!」
「へ?角度?」
「最初はもっと横に寝かせながら入れないと痛いもんなんだっちゃ!そんなことも知らないで今までセックスやってたっちゃ!?」
「……そんなもんなの?」
「女の苦労がわかったけ、ばか。」
ば、ばかってお前ね……
「ふ、ふんっ痛いのは俺が悪いにしても早過ぎるのは俺のせいではなかろう?」
「うちずーっと朝から我慢してるのに急にあんなことされたらいっちゃうに決まってるっちゃ!」
「あっ……朝からそんなこと考えてたのか!」
「朝に入れ替わる前から立ってたっちゃ」
「………………それは……違うやつだ……」
「違う?何がだっちゃ、ずーっとこうやって……」
「うん、わかる。解るけどそれ違うの。違うやつなの。解らなくていいけど違うやつなの。俺の身体の名誉の為に言わせて貰うけどちがうの。」
「??何が違うんだっちゃ?」
「単なる生理現象だから性欲とはあんま関係ないの」
「なおらないしー授業中になおったと思ったらトイレに行きたくなるしでものすごぉーく困ったっちゃ。男って結構面倒だっちゃね」
ゆっくり身体を起き上がらせずるりとコンドームを引き抜く仕草をするので、俺は慌ててラムから目を逸らした。
「下向けないと、垂れるぞ」
「へ、なにが?」
「だっだから!その、抜くときに…」
ちらりと視線を元に戻すとそこには……
「おっお前ね!一回だけっちゅーたんじゃないのか!?」
第二弾が装着されてそそり立ったそれ。
「そー、一回だけだっちゃ。ダーリンをいかすまで」
「てめぇ!そんなこたぁ聞いた覚えない!」
「ちゃんと内容を確認しないダーリンが悪いっちゃ。鬼ごっこの時もやったっちゃ、それ。」
ずおーっとまた押し倒されて、あのへらへら顔が男の顔になる。このなんとも言えぬ違和感。自分に迫られている嫌悪感。
「今度は痛くないように正常位でやるっちゃ。」
「やだーやだーもうやだぁー」
「やじゃないっちゃ。やーるーっちゃー!
ほらぁ、顔隠すんじゃないっちゃ」
「やめろー!」
両腕で覆っていた顔を力づくで晒され、まじまじと見られる。
「ダーリンったらえ・っ・ち・な・か・お」
「もーやめろよぉー」
「止めないっちゃよー、ダーリンのいっちゃう顔見るまでうちは絶対に止めないっちゃ」
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「変態ーッ!鬼ーッ!!」
「今はダーリンが鬼だっちゃ」
ラムが俺の右手に自分の左手を絡めるようにして握り締めた。
「もううちやり方が解ったから両手で支えなくてもはいるっちゃ」
「うそだろ、うそだろ、なあもうやだぁやめよ…」
「や・だ」
残った左手でラムの腹を懸命に押し返すが、全く岩のように動かない。左足が大きく持ち上げられて、股間があらわになったかと思った次の瞬間。
……ずずずずずず……
「ほぉら、解る?ダーリン、入ってくっちゃ…」
「っくぅぅぅ…うぁぁ……!」
先程よりは幾分マシになったが、やはり慣れぬ圧迫感。ゆっくり、ゆっくり、何かを確かめるかのように身体の中に進入してくる。
「うふぅ…全部、入った…」
「…ぁふぅ…ん……」
「どう?痛い?」
「ちょ…っと……」
「いい答えだっちゃ」
しばらくじっとしていたラムが、少し腰を引いた。
「いっ!?」
「すぐ良くなるから少しは我慢するっちゃ」
またラムが腰を寄せる。
「いひぃ!」
自分の声が制御できない。いつもなら死んだって出さないような喘ぎ声が、勝手に自分から生産されているのが信じられない。
「あぁ、ああーっ……っはっはっはゥん……いっいっや……」
まるであそこにもう一つ心臓があるんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。ずきずきずきずきと鼓動にあわせて甘く痛む。
「ダーリンの顔…かわいいっちゃ」
「ばかやぁ……みっ…あっ見るあっなぁ…あっ」
左手で顔を懸命に隠すが全部隠れるはずも無く、指や腕の隙間から覗いている自分の顔が、目線が、吐息が、身体をさらにいきり立たせる。
「そっちの方がいやらしいっちゃ」
「ひやぁ…うぅん、あヒぅ……」
いつの間にか押さえつけられていた右手が自由になっていたのに、俺はもう顔を隠したりラムを引き離そうとしたり出来ない。自分で自分の足を抱えるようにして、ラムの動きやすい体勢を作っていた。
「ダーリンそんなことしたらおっぱい触れないっちゃ」
そんなセリフに怒ることも無く俺はまるで言いなりみたくラムの両手を胸に誘導する。もう、身体がいうことをきかない。頭が言うことを言わない。
「いや、いや、もう、いやぁ」
「どうして?いきそう?」
「腰が砕ける、もうらめぇ」
「いくっちゃね、ダーリンいくっちゃね?」
「いく、いくのか?これが?」
「ダーリン顔見せて、うちに見せて」
「やだ、やだ、やめろこらラムぅ…うん、うんぁあっあっあっ!」
「うちも、うちもいくっちゃ」
そこまで聞こえてあとは真っ白になった。舌なめずりするような快感ではなくまるで衝撃だ。耳が聞こえない、目が見えない、頭の中から全てが消える。覚えているのは自分の恥ずかしい声だけ。
「いくぅ!」
★☆★☆★☆★☆
「やー……いったっちゃねー」
「うぅぅ…」
布団も敷かずに床の上で動き回ったもんだから、そこここが擦れて痛い。その痛みをようやく自覚し始めた途端に、ラムがそんなことが吹っ飛ぶようなセリフを吐いた。
「ダーリンったらすっごい締めるんだもん、うちびっくりしたっちゃ」
「し…!?しっ締めてなんかおらん!」
なんちゅう事を言い出すんだこの女は!……あ、今オトコか……
「うそ。今だってひくひくしてるっちゃ」
「ちがう!そっちだろ!」
びくびく蠢いている連結部分。まだ差し込まれている男の身体。こいつが震えているに決まっている。俺の、なんか、そんな、いやらしい!
「そう?じゃあ確かめよっか?」
身体を引き抜かれて、自分のあそこがブルブルと痙攣しているのが自分で解った。ラムがほうら、と言いたげな顔で短く訊く。
「ね?」
「あっ…やっ……っ!……」
顔が染まる。素直に顔が染まる。
「もーダーリン可愛過ぎだっちゃー!もうこのままでいいっちゃ!」
ぎゅうと。身体が潰れんばかりに抱きしめられて頬にキスをされた。
「ばっばか!このままでたまるか!」
「……そんなにもとの身体に戻りたい?」
「当たり前だろーが!」
「ほんとに?」
「くどい!」
ちぇーという顔で、ラムが立ち上がって本棚の上からスティック状のなんかを取り出してくりっと捻った。
身体が浮き上がるような眩暈と軽い吐き気がして、思わず目を閉じた。
「もう目をあけていいっちゃ」
その声が耳に到達したときに、身体がずっしりと重くなった気がした。……あれぇー、なぁんで俺は何も言ってないのに“ラムの声”が聞こえるのかなぁー?
「……説明を…してもらおうか」
「元に戻ってよかったっちゃねー、ダーリン」
「説明しろ」
「……あー……直ったっちゃ。」
「てめぇ」
俺は全てを悟った。こいつは機械が壊れた、というハッタリかましてやがったのだ。
「さては機械が壊れて人格入れ替え云々とか全部嘘だな」
「それはホント。でも機械の効果をリセットできる機械があるのを今思い出したっちゃ」
「おぉーまぁーえぇー!」
「あん、怒っちゃヤだっちゃ」
★☆★☆★☆★☆
服を着替えて、布団を敷いて眠ることにした。二回もやったもんだから体力の消耗が激しくてもう怒る気にもなれない。
「お前もUFO帰って身体洗って来い。ずるずるだからよ」
「ダーリンいつもより優しいっちゃね?」
「いっつもこうじゃ」
うん、もうラムの言葉に心が揺れることもない、いつも通りだ。そっけなく出る自分の言葉に感動する。
「ねぇダーリン、うちのこと…好き?」
ふとベランダの窓を開け、振り向きもせずにラムが訊いた。
「なっなにを!」
思わず持っていた枕を取り落としそうになる。
「うちのことすき?」
顔が強張る。やっともとの身体に戻って脳味噌が男になると途端にダメだ。恥ずかしくって馬鹿馬鹿しくって言ってられない。
「…言ったろが」
「?」
「い・ま・わ・の・き・わ・に、ってな。」
俺は後姿のラムにそう言う。
一瞬強張った背筋を抱きしめたい衝動を何とか封じ込めながら。
「それでこそダーリンだっちゃ」
ため息みたいな笑い声でラムが振り返り駆け寄って俺の頬をつねった。
『俺がここまで付き合う女はお前だけ。
それだけ解ってれば言葉なんぞ要るまいに、ああ馬鹿馬鹿しい。』
その言葉をすんでの所で飲み込んで、ごほんと咳払いをひとつ。
「早く戻ってこいよ」
「……うん。」
満面の笑みでラムが返事をする。
俺は太陽に吸い込まれていくラムを見ていた。
「なんちゅう難儀な女に惚れたかな、俺も」
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