睡眠薬
あたる
ひとかじり
ごくり
パラフィン紙の擦れる音。
隣で暢気な顔して眠ってやがる。
神経質な学友から仕入れた薬は白色で
真ん中からぱきりと折る為の溝がある。
二日にいっぺん薬を折る。
薬を飲むことにあまり意味が無いと思っている。
それでも飲まないと不安なのは
この世で一番信用ならない身体の主だから。
夜中目を覚まして理性が飛んだら
この世で一番我慢ならない性格の人だから。
だから今日も薬を飲むよ。
水で流し込む苦い錠剤が二つ半
競うように食道を通過する。
もう一度確かめるように隣を見る。
ぐぅぐぅ気楽な寝息を立てている。
腹立ち紛れに頬をぎゅうとつねってやった。
眉間にしわ寄せ、彼女が寝言を呟く。
「キスはもっと優しくするもんだっちゃダーリン」
ムカついた。
あんまりムカつくので首筋にキスマークつけて寝た。
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