光子郎のはなし

                クラスにかわいい女の子が居て
                その女の子と同じ秘密を持ってて
                クラスの誰も知らない彼女と
                キスをして
                肌に触れて
                一緒に眠る
                だけどユウウツ
                だってその女の子は
                僕の目の届かないアメリカに
                同じ秘密を持ってるボーイフレンドがいる

                輾転反側2

                 「なんだそりゃあ!」
                 思わずパソコンに向かって声を上げた。
                 開けているのは京くんからのメール。
                 今日のデジタルワールドでのことが事細かに報告されている。
                 そして名前、名前、名前が。
                 マイケル。
                 「……なんですかそれは……」
                 もう一度上げた声はよそ行きで気力の失せた、そういう声。
                 あの面食い京くんが一目で気に入るのだ、さぞ見目麗しい男の子なのだろう。
                 そして何よりキツい一言。
                 “ミミお姉さまと同じくらいの身長”
                 ……ああそうですか。
                 悪かったなチビで。
                 どーせ僕がミミさんと並んだって絵になりませんよ。下手すると姉弟ですよ。
                 どこへ向けたらいいのかわからない、苛立ちに似た焦燥感に全身が支配される。なのに魂から力が抜けて気が遠くなっているような気がした。
                 抜け殻の身体が意思も無くベッドを要求し、意識もしないままベッドに抜け殻を投げ出す。
                 視界に入っている蛍光灯の輪が二つ。
                 時々本当に会いに行ってやろうかと妄想する。
                 ズルしてデジタルゲートをアメリカにこじ開けて
                 アメリカったって広いんだ、彼女の家の彼女の部屋の彼女のパソコンに
                 彼女の眠る枕元に
                 驚くだろうか
                 喜ぶだろうか
                 それとも
                 職権乱用する僕に失望するだろうか
                 ようやく最近そういう夢想を繰り広げるだけで気が済むようになってきたのに、相変わらず彼女は僕の予想をはるかに上回る突拍子も無いことをしでかしてくれる。
                 「会いたい」
                 口に出してしまったらもうダメだ。
                 鼓動が弾けて指が震える。
                 不安と孤独で気が狂いそうだ。
                 君が居ないだけで僕は簡単にダメになる。
                 逃げ込むみたいにデジタルワールドのことに没頭する。
                 苦しいことばかり思い出すより、君が居ないことを実感するより、忙しさにかまけて忘れてしまった方がずっと楽なんだ。
                 ……なんて言い訳したら、また君は僕を叱るかな。
                 “パソコンを盾にして私を無視しないで!”
                 今度はマイケルを盾にして何を無視しているのだろうか。
                 「……会いたいな」
                 無意識に二度、口から出た言葉。
                 三度目は願い事のように言うだろう。
                 叶ってはいけない願い事。
                 願ってはいけない現の夢。
                 そして僕はドアに鍵を掛け
                 布団にもぐって
                 君の肌を思い出すよ。
                22:18 2006/08/10

                 


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