光子郎のはなし

                クラスにかわいい女の子が居て
                その女の子と同じ秘密を持ってて
                クラスの誰も知らない彼女と
                キスをして
                手に触れて
                だけどユウウツ
                だってその女の子は
                約束もさせてくれないまま
                アメリカに引越していってしまった

                輾転反側

                 手持ち無沙汰なのにパソコンに向かうのも億劫。
                 こんな土曜の夜はよくない。
                 ベッドの上には散乱した本とデジヴァイス。
                 長い長い電話番号が踊っているピンクのメモ。
                 握り締めたままの電話の子機。
                 天井に煌々と輝く蛍光灯の輪が二つ。
                 何も手につかない。
                 思い浮かんでは消えていく記憶の端を掴むのが怖い。
                 自分が頭から何を引っ張り出そうというのかが解らないだけ。
                 声が聞きたい。
                 こっちが夜だとあっちは朝。なんだか無駄に宇宙を感じる。
                 せめてイギリスだったら昼で……まだもう少し気軽に電話ができるのに。
                 元気ですか?少し時間が出来たので電話をしてみました。
                 用事もないのに国際電話なんて変に思うかな。
                 彼女は筆不精というわけではないけれど、キーボードで文字を打つのがあまり得意ではないので、メールが短い。メールをやり取りし始めた頃、誤変換で意味が解らない文章をそのまま送ったりするので、いちいち添削して返していたのも不味かったような気がする。
                 短い文章、少ない内容。
                 でも3日に一度、必ずメールは送られてくる。
                 何度かチャットや音声通話などを彼女に勧めてみたけれど、如何ともしがたい時差の壁により、ほんの数度だけしか成功していない。
                 アメリカでの生活は楽しいんだろうか。
                 あの夜のことを思い出さなくなるくらい?
                 目を閉じると瞼の裏にぼんやり光る輪っかが二つ。
                 まるで天使の輪のようにぼやけて輝く。
                 「悔しくて悔しくて腹が立つ!」
                 床に落ちた分厚いHTML事典が音を立てた。
                 いっそアメリカに続くデジタルゲートを探し出して
                 そんで寝ぼけ顔の君を
                 パジャマのままの君を
                 おどろきとまどう君を
                 そこまで考えてハッとした。一体自分はそんな無防備な彼女に何をしようというのか。
                 ……どうせそんな彼女を目の前にしたところで何にも出来ないくせに。
                 ああ、声が聞きたい。
                 あの甘ったるい声で名前を呼ばれるだけでもいい。
                 頭を抱えてベッドを転がった。思い出そうとすればするほど胃の奥でえも言えぬ感情が七転八倒する。腹立たしいのに靄がかった脳味噌に沸いてくるのは一度だけ触れた唇の感触。
                 何が悔しいって、自分がこんなに思い煩ってるってのに、相手はそんなこと知りもせず悠々とブレックファーストでも食べてるかと思うと、まるで自分だけが取り残されて――――まるで自分だけ汚くなってしまったようで。
                 感情に振り回されて何も手につかない。
                 冷静にも沈着にもなれない。
                 君を思う僕はただのエロガキ。
                 デジモン騒動で取り付けた部屋の鍵は何だかんだで取り外されることは無く、その役割を全うしている。お母さんもお父さんも急にドアを開けるなんて無粋はしないと解ってはいるけど、心情的にどうしても、掛けなきゃ安心できない時もあるわけで。
                 視線をドアにやり、鍵が掛かっていることを確かめて電気を消す。
                 とりあえず落ち着くためにする、というのも情けない気がするけど。
                 まあ許してくださいよ。
                 男の子ですもん。
                20:00 2006/08/10

                 


                広告 [PR] 花 小説 ブックマーケット お見合い 無料レンタルサーバー ブログ blog